米国株から一部、リバランスが起きているので、今後の投資対象を考える事が増えています。今回は国、地域別に個人的に思う点をまとめてみました。
米国株
労働人口の増加ペースは確実に失速する
移民の流入が壊滅的に減少しており、2月の南部国境警備隊が遭遇した数は11,706件と絶望的です。(関連記事)
成長率の推移は生産性と労働人口の増加が基本で、浮き沈みは負債によるものです。負債は全額誰かの利益です。そのため、米国は労働人口が増えなくなったら長期的に減速するのは明らかなので、マクロ的には今後ゆっくりと地味な経済指標が続くことが考えられます。
GDPが落ちても企業収益は落ちにくい
一方で、米国株は米国企業の収益と連動しており米国のGDPには連動していません。(関連記事)そして米国企業の収益が連動しているのは全世界のGDPです。
1960年代からの企業収益の伸びを計算すると、S&P500は昨年末時点で6,400ぐらいまで上昇するのが妥当な水準でした。
そう考えると、米国内のGDPが失速しても、指数上位のテック企業の業績はそこまでダメージを受けない可能性が高く、結果的に米国経済の失速(による株の低迷)を相殺する可能性があります。
米国経済にはまだ切り札がある
また、FOMCが利下げをする余地、QEを開始する時期が今後意識されます。
特に利下げに関しては、全滅状態の住宅指標が改善していく可能性が高く、もし30年固定金利が6%を切ってくれば劇的な改善が予想されます。住宅供給はリーマンショック以降不足しており、経済波及効果も高いため、米国経済はまだ経済拡大期を延命する切り札を残している状態です。
これらを総合すると、今までのペースは落ちるもののレンジ相場を続けたり下落が強まったときに投資しておくのは無難に結果を出せると考えられます。
インド株
インド最大の問題は雇用
インドはテック企業に強く労働人口の増加も続くことから注目されることが多いですが、失業率が高いです。
これは雇用創出が追いついてない形で、新興国では労働人口が増えても雇用創出が追いつかないことはよくあり、その場合労働人口増の強みは幻想になる可能性があります。
悪循環に陥るインド経済
インドの雇用創出がうまくいっていないのは、行政がブレていたり保護主義の傾向が強いため、外資の流入が失速してることなどが関係しています。
また、エネルギーを輸入するため、資源価格が高いとルピー安が進行、外資流出がそれを加速させインフレが進行、その結果さらに外資が流出するという悪循環が起きています。
逆に言えばこの連鎖が断ち切られる時がチャンスです。
インド経済を見るべき時
例えば最近ではFRBが年内2回の利下げ予想を維持したこと、また、原油価格が長期のレジスタンスを下抜けそうになったことで、ルピー安、インフレ懸念が後退し、これでインド株に買いが入っています。
ルピー安、インフレ、そして雇用の改善、この辺が意識されそうなタイミングがあればチャンスかと思います。
また、できれば行政が保護主義の姿勢をやめ、大々的なインフラ公共事業(すでにやってますがもっとやるべき)をまた実施したり、そういうときが重なればさらに良いです。
欧州株
欧州株は無難に良さそう
欧州は経済指標が悪い、ドイツも最悪とか言われてましたが、実はインフレの鈍化によって実質賃金が改善し、それに伴い小売りがゆっくりと上昇、そしてGDPが改善していました。
強弱混在しつつもゆっくりとした改善はしばらく続くと考えられます。
また、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社のSPDRユーロ・ストックス50 ETFの情報によると3月25日時点で3-5年予想EPSが10%、PERが15倍、PBRが2倍です。(ざっくり)
成長性が高いわりにやや割安に感じられます。
地政学リスクはなかなか解決しない
米国がウクライナへの支援に乗り気ではないことを、ロシアに見せてしまったので、これでは停戦できません。
当たり前ですが、相手のすべてを奪えるとわかったときに、手加減するわけがありません。
なので交渉がロシア優位になるのは当然であり、停戦と復興を期待して欧州株を買うのは避けたいところです。
日本株
インフレに賭ける市場
最近、日本経済が超インフレになって、株価が爆上げするという見解が多い気がします。
たしかに、地方を見ると賃金が特にあがっているのでインフレを加速させると思うのもわかります。また、トルコやアルゼンチンなど、インフレが進む国の株価はとんでもなく上がります。
でもこちらで記事にした通り、賃金上昇が本当に物価をけん引していくかは疑問です。また、こちらで記事にしたことを応用すると、物価の先行指標を見ていく限りおそらく世界のインフレは抑制されていきます。※トランプ政権第一期目、関税発動後の物価推移はこちらを参考にしてください。
日本は名目で株価を押し上げないかぎり、実質成長で押し上げるのはかなり厳しいので、この辺をどう考えるかで市場の魅力が変わります。
日本経済は実質では成長しにくい
日本の場合、規制が強すぎて生産性は上がりにくいです。
冒頭でも述べましたが、生産性を上げられないなら労働人口を増やすしか道はないです。(負債を爆増させるという手もあるけど)
失業率が低すぎて雇用はできず、移民の受け入れも反感が強く、女性の就業率も上がったので、労働人口は増えません。ちなみに少子化対策はフランスなどを見てもわかりますが、出生率2.0を安定して超えることは不可能です。
というわけで実質成長は期待できません。
なので日本株メインの方は指数よりも、バフェットさんではありませんが商社のように安くて世界中でビジネスをしてる企業が長期的には良いかもですね。(ただし世界のインフレが鎮静化する中で商社を買うべきかは別問題ですが)
高金利と通貨安
最近、日本の長期金利が簡単に1.5%まで上がりました。
こちらで記事にしましたが、これはさらに進む可能性があります。
もちろん利払いがきつくなるので、日銀に対して政府は「抑制してよ」と言い出すと思いますが、それは通貨安が進むことになります。
通貨安を防衛したいなら高金利となり日本国債は売り込まれます。
通貨がやばい、高金利がやばい、右へ左へ対策をしながら、結局は日本の通貨も国債も売られていくシナリオに注意したいです。※公的国内債務のデフォルト件数は、過去に60件以上起きています。
また、日本の対内外投資を見ると圧倒的に流出の方が多く、これは九州への半導体工場誘致などが話題でも、実際には資本流出は進んでいること、つまり長期的に円安が続くことを示唆しています。
つまり賃金上昇が物価をけん引するある意味嬉しいインフレではなく、円安によって物価上昇が進むシナリオは現実的にあると考えています。
中国株
中国経済は「失われた30年」にならない
僕は、香港株を買っただけあって、中国株には結構ポジティブです。
理由は、労働人口減と言っても、GDPに影響する都市部の労働人口は増えるからです。
また、テクノロジーの向上が尋常ではないこと、そして政府の強権で計画的に移住させ都市を作っていける事、また、特定のセクターに莫大な助成金を出してグローバルシェアを奪ったり、過去にそういうことをやってきた手法をみているからです。
つまり中国は、独裁国家の強みを活かす術を熟知しています。
問題は不景気の今の状況ですが、中国政府が日本の失われた30年を繰り返す可能性はハッキリ言ってゼロです。なぜなら大不況からの長期低迷は、ばらまきが足りない場合そうなるとバーナンキ元FRB議長の研究などで国際的にもうわかっているからです。
ではなぜ本格的にやらないかと言えば、米国の金利が高いからです。米国の金利が高いと元安が進むので出来ません。下がっていくなら動き出します。
逆にいえば米国の金利が今後もガンガン上がっていくとすれば、中国経済は復活できません。
中国株をだれも買いたくないというメリット
割安でありだれも買いたくないということは、投資において大きな優位性です。
中国株はだれも買いたくありません。
それは中国が強権を発動して民間企業を締め付けたりするからですが、だからといって数年前のテック企業や塾への締め付けを、中国共産党の危機意識によるものだと簡単に解釈するは、個人的には疑問です。
あれは中国が長期的に成長するために、まっとうなコンプラをテックに強制したと解釈しています。
また、当時暴騰する住宅価格と塾の費用で中国人は将来を不安視し消費を伸ばすことができなかったので、住宅と塾規制は消費主体の経済を作るための長期的な戦略の一つでもあります。
その他中国については、こちらにもまとめているので参考にしてください。
以上です。
もちろんこの通りになる保証はできませんが、最近思ってることを書いてみました。ここまで目を通していただきありがとうございました。
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