春節中に株式市場を震えさせたDeepseekショック
半導体株を暴落させたこの事件から取引初日の昨日、少しだけ中国株(香港ハンセン指数)のETFを買ってみました。買ったのは運用額全体の4.5%ぐらいで、トラッカーファンドオブ香港です。今日はその理由を記事にしてみます。
トラッカーファンドオブ香港とは
- 正式名称:Tracker Fund of Hong Kong (TraHK)
- ティッカーシンボル:02800(香港証券取引所)
- 設立年:1999年
- 管理運用会社:恒生投資管理有限公司(Hang Seng Investment Management Limited)
- 受託者:State Street Bank and Trust Company
- ベンチマーク指数:ハンセン指数
- 年間継続費:0.07%(※1)
- 市場:香港証券取引所
- 取引通貨:香港ドル
ブルームバーグの掲載ページはこちら
ファクトシートや目論見書はこちらから、「文書」タブをクリックしてください。(恒生投資管理有限公司のサイト)
※1 ファクトシート(販売資料)によると継続費用の数字は、2023年12月31日までの年度の管理手数料、受託者手数料、その他の継続費用に基づいて計算された推定値との事。つまりそれらが含まれていると解釈できます。
個人的には分配金が多い事と、政治リスクを低減したいので香港の運用会社である点が気に入りました。
中国株投資規制におけるトラッカーファンドオブ香港の対応
第一次トランプ政権終了間際の2020年11月12日、大統領令13959が発表され、アメリカ合衆国の制裁リストに指定された中国企業への新規投資が規制されました
その後、TraHKは制裁対象企業への新規投資を停止しましたが、すぐに方針を変更し、これらの企業への投資を再開しました。
すぐに再開できた背景として、ブルームバーグの記事は次のように伝えています。※運用会社は2022年9月19日より変わっています。
トラッカーファンドおよび運用を担当するステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・アジアは米国の法人とは見なされないため禁止措置の対象とならないとし、アジア部門は「大統領令の下で制裁を受けた証券への新規投資を含め、ハンセン指数を追うファンドのポートフォリオ運用を続けることできる」と説明した。
中国株固有のリスク
中国株取引が禁止された時、米国人が対象だったのになぜか日本のネット証券でも最初は禁止になりました。
当時友人が問い合わせた話によると、NY市場の中国株が香港市場で取引継続できるかわからないという話で、最悪パーになる可能性もあると説明されたそうです。
その後、継続取引できると言われたり、結局今では米国籍のお客等々だけ規制されるなど、当然な制限になっていますが、当時は証券会社も初めての経験で慌てていたようです。
というわけで僕は政治に巻き込まれたくないので、「ファンドの質」+「運用が香港企業」を重視して選びましたが、中国株にはこういうリスクがあるので、あくまで少しだけの運用です。
中国経済指標(2025年2月4日時点)
もし中国の経済指標を信じるのであればこうなっています。
・賃金 2023年~2024年で+5.8%(最低賃金+3.8%)
・失業率5.1%(大学生を除く若年層失業率17.1%)←米国の長期平均は約11.61%
・小売販売前年比+3.7%
・インフレ率前年比+0.1%
※ソース:中国国家統計局
このほかにも色々見る限りでは、世間で言われているほど悪いようには僕は見えなかったです。ただ、若年層失業率は確かに高いですね。
一方で実質賃金の伸びが異常に高いです。ナニコレ怪しい。
中国経済の長期的見通し
労働人口が減るのでダメ。
と言われますが僕はここはもっと掘り下げるべきだと思っています。
独立行政法人経済産業研究所のこちらの記事によれば、中国が10年に一度行う国勢調査、「第7回人口センサス」のデータが紹介されています。それによると2020年の都市部の人口は9億199万人(全体の63.9%)で、農村部は5億979万人(36.1%)でした。2010年と比べると、都市部の人口は2億3,642万人増え、農村部は1億6,436万人減少しているそうです。
これは都市部においては労働人口が増加している可能性が高いです。
中国政府は戸籍取得制限を緩和しており都市化比率の増加ペースを考慮すると都市人口は年1~1.5%のペースで増加すると考えられます。
都市部がGDPの主力であることや、農村部の一人当たりGDPはまだ高くない現状を考えると、これは十分成長するように見えます。
ちなみにこのペースは、労働人口が約1億6千万人、昨年約200万人増加した米国の状況とそれほど変わらないです。また、米国は厳しい移民政策により流入が今後大幅に減ると考えられ、人口増による強みが陰る可能性があります。(僕の株式は今のところ米国が主力なのですが…)
2025年2月6日追記
中国の住宅価格高騰は北京と上海を除き、所得増加と人口増加(移住)で説明できるとの研究を見つけました。つまりこの2都市以外については、住宅価格についてバブルだったという定説に疑問を投げかける内容です。資料はセントルイス連銀のこちらの記事です。
独裁国家は成長しないは嘘
中国が不動産主体の成長に依存してきたことや、政府権限が強すぎること、自由に資本移動が出来ない事など、懸念は確かにあると思います。
でも、ルチル・シャルマの著書「シャルマの未来予測 これから成長する国 沈む国」P124~p125によれば独裁国家と民主国家で、成長率の差は明確にはないようです。この本によれば10年間の平均成長率が5%以上あったケース124例のうち、独裁国家は60例、民主国家は64例だそうです。そして成長率が7%を上回る場合だと事例は43例、そのうち独裁政権が35例となります。逆に3%を下回る場合は138例あり、そのうち100例が独裁政権だったとあります。
つまり政府の力が強いだけにやるときは徹底的にやってコケるときは徹底的にダメという感じですね。
中国は徹底的に経済対策をするか
これに関しては、今年始めると思っています。
僕は前々から中国はFRBが利下げに入ったら経済対策を徹底的に始めると思っていました。その理由は、元安の心配をしなくて済むからです。
そう考えていたら昨年9月にFRBが利下げを始めた直後に、中国政府が動き出し株価が暴騰しました。しかしその後動きが止まりあれはなんだったんだ?となっていますが、動きが止まった理由は利下げに入っても米長期金利が下がらなかったためです。
おそらく米国経済が落ちつき長期金利が下がりだしたら、中国政府はまた徹底的に経済対策を始めると見ています。米国の経済状況からそれが今年だと思っているのですが、そう考えていたところにdeepseekショックが起きました。
Deepseekの意味
deepseekはChatGPTをパクったとかいろいろ言われていますが、僕はあまりそういうスジ論を述べても仕方ないかなと思っています。
エンジニアとなる大卒数が中国は毎年、米国の5倍~10倍ぐらい多いので追いつくのは時間の問題です。
また、完全オリジナルであってもなくても中国側企業ではそれが主力になります。アリババにも既にあるようですが、他社含め次々リリースされると思います。どんなイノベーションもそうやってナンバー1は時間と共に地位を失うのです。
さらにdeepseekの創業者は中国政府と面会しているようなので、中国政府がAIや半導体で反撃する準備を整えていなかったとは考えにくいです。
つまり状況を冷静に見れば、米国独歩の性能に中国が追いついてくるのは当然であり、政府ぐるみな事からトランプ政権の規制は想定内で、既に生成AIだけでなく高性能半導体まで自前で用意できる状態になっているのではないか?と考えるの自然だと思います。
ナンバー1は20年続かない
1950年から10年ごとに区切ると、国別の株式パフォーマンスの上昇率ベスト5は常にバラバラです。1950年代は敗戦国の復興でドイツと日本が最も成長しました。次はヨーロッパです。1990年代も実は米国ではなくスイスが最も成長しています。
20年同じ国がナンバー1を維持したことはありません。
でも個人的にはNVIDIAやマグ7の収益の伸びを見ていて、米国がその地位を譲る未来をどうしてもイメージできませんでした。
そんな中で、中国の最大の課題である労働人口問題への取り組み、経済を噴かすであろうタイミング、そしてAI、全てが繋がってしまった感じです。
わからないからこそ投資する
正直、一番投資したくないと思うのが中国です。
規制とかされるしVIE(変動持分事業体)の問題もあるし中国へ投資するのは出来ればしたくありません。
でも投資はわかったときには遅いです。
誰もがチャンスだと思ったらもう買場ではないし、だれも買いたくないもの(時)がチャンスなのです。
だからこそ今回数%だけ中国株を買ってみました。
果たして…
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