ここでは米国人の家計や資産、ローンの状態がわかる指標を紹介します。
追記 3月9日
2025年3月現在、政府効率化省の影響なのかよくわかりませんが、指標の次回リリースが未定になっているケースが増えているように感じます。リンク先をチェックする場合は指標がいつのデータを表示しているのか確認するようにしてください。また、FREDの場合、次回更新日(更新ロジックが作動した日)と、実際に更新された日(更新すべきデータが拾えた日)は、必ずしも同じではない点も注意してください。
ミシガン大学消費者信頼感
https://fred.stlouisfed.org/series/UMCSENT
「今後12か月で借入金の金利はどのようになると思いますか?」「今は住宅(自動車)の購入に適していると思いますか?」など、約50のコアな質問で消費者の景況感を分析します。ブレ幅は大きい指標ですが、消費者は比較的正確に認識している傾向があり、指標の方向性は実態に近いものがあります。余談ですが米国株が約3倍になった10年は、この指標が低い状態から始まるという特徴があります。
アトランタ連銀賃金上昇トラッカー
https://www.atlantafed.org/chcs/wage-growth-tracker
名目賃金の上昇率を複数調べることができます。賃金上昇は政府発表の時給だけでは実態はわからず、ADP雇用統計の賃金インサイト(参照)や、こういったチャートから総合的に判断するのがおすすめです。特に賃金が低下している場合、ニュースやSNSではかなりネガティブな印象で伝えられますが、CPIなどと比較し実質賃金が弱まっていないのであれば安易に同調するのは危険です。
クレジットカードローン延滞率
https://fred.stlouisfed.org/series/DRCCLACBS
クレジットカード延滞率は何度も話題になりますが、これだけで経済全体を推測しようとするのはかなり無理があります。歴史的には健全な範囲であることもポイントで、期間を都合よく切り取っているインフルエンサーなどもいるので注意してください。
各種ローン延滞率
https://fred.stlouisfed.org/graph/?g=lVEf
青が住宅ローン、赤がクレジットカード、緑がリース融資、紫が事業ローンの延滞率です。
複数の職に就いている人の数
https://fred.stlouisfed.org/series/LNS12026619
次にまとめて記載します。
複数の職に就いてる人の割合
https://fred.stlouisfed.org/series/LNS12026620#
ダブルワークなど複数の仕事をする人が増えると、経済がかなり悪いという印象を受けます。実際にその人数は増えています。しかし、割合で見ると決して多くはありません。
ここ1~2年、雇用統計の事業所調査の雇用者数と、世帯調査の就業者数に乖離が発生しており、事業所調査だけがダブルワークをカウントするため、この乖離を実体経済の弱さと解釈するもっともらしい見解が横行していますが、これらを見る事でその分析は現実的ではないとわかります。
ちなみにこの乖離の原因は、急増した移民が摘発などを恐れ世帯調査に応じないためという見解が最も現実的です。
総消費者信用のパーセント変化
https://fred.stlouisfed.org/series/TOTALSLAR
次にまとめます。
総リボルビング信用のパーセント変化
https://fred.stlouisfed.org/series/REVOLSLAR#
信用が減るということは、ローンを組まなくて済んでいる、あるいは上限いっぱいになっている、などが考えられ、この二つは相反します。
前者では支出を抑え貯蓄を優先していたり、借金に頼る必要がなくなっている状態です。後者では銀行やクレジットカード会社が貸し出し基準を厳しくしている可能性もあります。
他の指標と総合的に判断する必要がありますが、現状は強い実質賃金や金融ストレスの低下、銀行信用の増加などを背景に、前者だと考えられます。
消費者債務返済額の可処分所得に対する割合
https://fred.stlouisfed.org/series/CDSP
次の指標とずれがあることに注意してください。
家計債務返済額の可処分所得に対する割合
https://fred.stlouisfed.org/series/TDSP
米国民の家計については厳しいとする報道が非常に多いですが、経済は強い状態が続いています。この指標をチェックすると、返済の負担はパンデミック前と大差ない事がわかります。報道やSNSの論調と実体は異なっていることがわかる典型的な指標です。
銀行信用
https://fred.stlouisfed.org/series/TOTBKCR
信用が増えているということは、順調に貸し出しが行えているということです。経済の波の上昇は負債が創造するので、重要な指標と言えます。
全年齢層推定貧困割合
https://fred.stlouisfed.org/series/PPAAUS00000A156NCEN
1年に一度しか更新されませんが、これも報道やSNSの論調とは違う実際の姿を見せてくれる代表指標です。格差が広がったり富を富裕層が独占していても、貧困層は増えていないと言えます。
世帯収入の推移(平均・中央値)
https://fred.stlouisfed.org/graph/?g=1c0s
富の格差や富の占有と言われる中で、平均世帯だけでなく中央値世帯の所得も順調に収入が増加していることがわかります。増加ペースはやや弱いように見えるかもしれませんが、増加率を計算すると2022年から2023年にかけて約4.5%増加しており、これは賃金の増加率から考えて妥当です。つまりインフレを上回る増加をしていることになります。
ただし、富裕層の資産はS&P500の平均増加率(約10%)ぐらい増えると思うので、そういう部分では格差の問題は今後もますます拡大しそうです。
※更新頻度が少ないことに注意してください。
一人当たり実質可処分所得
https://fred.stlouisfed.org/series/A229RX0
2023年12月から2024年12月にかけて、1.16%増加しています。
貯蓄率
貯蓄率が枯渇すると言われてきましたが、現状その心配は無用です。貯蓄率はGDPの改定などで頻繁に修正されるので注意してくだいさい。
利子収入
https://fred.stlouisfed.org/series/A064RC1Q027SBEA
配当収入
https://fred.stlouisfed.org/series/B703RC1Q027SBEA
利子と配当合わせて4兆ドルになります。つまり日本人が働いて生み出すGDPにほぼ匹敵する不労所得があるということです。これだけの規模の経済をマイナス成長にするのは簡単ではありません。ここ数年、リセッションが来るとよく言われていましたが、こういった米国の経済規模を無視した論調も多かったと思います。
預金総額
https://fred.stlouisfed.org/series/DPSACBW027SBOG
約2800兆円の預金総額…
米国世帯の純資産レベル
https://fred.stlouisfed.org/series/BOGZ1FL192090005Q
約2.5京円の資産、しかも純資産です。米国人の資産の規模が異次元になっていますね…
GDPに対する家計負債の割合
https://fred.stlouisfed.org/series/HDTGPDUSQ163N
GDP比で見て家計の負債が低下し続けていることは、あまり知られていません。これは2008年金融危機のあと、米国人がまじめに負債を返済し続けてきたということです。そのため、金利を下げても借りる余力はなかったと言えます。
しかし時代は変わりました。今は借り手より、貸し手有利の金利になり、米国人は負債を増やす余力があります。
この指標は高確率で大暴落や金融危機を予見することはできませんが、社会全体に大規模でシステミックなリスクが膨らんでいるかの一つの目安になります。