ダラス連銀地区の展望調査が出ましたので詳細をお伝えします。
ダラス連銀展望調査の重要性
ダラス連銀の管轄には、全米第2位の経済規模であるテキサス州が含まれており、近年は先端半導体工場や、テック企業が増えている重要州です。
また、地区連銀の景況調査は、ブレ幅が大きく参考にしにくいのですが、経験的にダラス連銀の調査は安定しており、米国の経済活動を自然に反映している印象があります。
また、アンケート調査の回答なども充実しており、とても参考になると思っています。
サービス業展望調査
ではそれぞれを見ていきます。
まずサービス業は、前月から小幅に改善となりました。
収益指数は+6.3から8.6に拡大しました。(平均は10.3)
雇用は+1.2と小幅に拡大、一方でパートタイムの雇用は2か月連続でマイナスです。
販売価格は上昇していますが+3.3から+2.7に減速しました。
見通しの強さは概ね変化なしと言えると思います。
全体的には、米国経済が強めに失速した6月からの回復が続いている底堅い様子ですが、かといってトレンドとして減速傾向に変わりなく、限定的な回復に落ち着いている印象です。
小売業展望調査
小売りは7月に比べ悪化です。
収益指数は+0.8から-2.1に失速、縮小です。
雇用もパートを含めマイナスです。
コストや販売価格は悪化しているものの勢いは減速しています。
見通しはこちらもあまり変わっていません。
ダラス連銀の調査は企業幹部への聞き取りなので、基本的には先行するものです。
なので、最近はレッドブック指数や、政府センサス局の統計でも小売指標は堅調ですが、やがて勢いは落ち着くかもしれませんね。
やはりトレンドとしての米国経済の減速を感じます。
ただ、小売業は対GDP比で約6%なので、先にお伝えしたサービス業が強い限り懸念しすぎる必要はありません。
その他、ひとつ特徴として忘れないでおきたいのは、こういったアンケート調査は小売りに限らず、S&PグローバルのPMI調査でも、ISMの調査でも、コスト上昇などがよく報告されます。しかし実際に物価として反映される影響は限定的である点です。
これを意識しておかないと、コスト上昇の傾向を過大に受け取ってしまいます。
製造業展望調査
製造業は改善しています。
8月は拡大を続け生産指数は15.3となりました。7月の21.3からは低下したものの、平均(9.6)を大きく上回っています。
雇用関連は、雇用と労働時間の増加を示唆しています。企業の20%が純雇用、11%が純解雇を報告しているとのことです。労働時間指数は7ポイント上昇し、15.0となり、3年以上ぶりの高水準となっています。
他の指標も、今月は改善と考えて良いと思います。
センサス局の小売統計でも、自動車の販売が非常に強く関税懸念の駆け込み需要が続いているのだと思います。でも、製造業が8月に改善した理由はそれだけではなく、月初にあった雇用統計の急激な悪化により金利がやや低下、これによる改善の影響もあったのかと思います。
米国経済は雇用者数の減少などで成長率が減速していくのは必然ですが、もしそうであるなら、金利を下げる余地があるため総崩れまでには時間が相当稼げることになります。
つまり減速はするけど、まだリセッションには至らないということですね。
特別質問
今回の調査には、前回4月に続いて特別な調査が行われており、企業が関税にどう対応しているかがより鮮明になっています。
それによると、関税の影響でマイナスの影響があると答えたのは48%です。
そして価格の上昇を顧客に転嫁すると答えた企業の、実に76%が1~3か月以内に転嫁と答えています。
この比率は詳細部分で明確な変化はあるのですが、3か月という期間で見れば4月の時とあまり変わっていません。
同じことを4月も記事にしましたが、企業は価格転嫁のタイミングを比較的早く考えており、その比率が変わっていないということは、少なくても関税分の初動の影響は概ね終わっていると考えられます。
最後に
結果的に、減速傾向であるなかでも、底堅い米国経済を確認できました。
そして関税の影響もやはり限定的であることを裏付ける内容でした。
当初は追加で2%以上、物価は上昇すると言われていましたが、需要の減速や家賃鈍化の必然などから、そのような事態にはなるはずがありませんでした。
しかし、繰り返しお伝えしていますが、ここにきて移民減による供給ショックらしき現象が起きており、野菜の高騰が始まっています。
これは新しいフェーズです。
引き続き油断せず追跡していこうと思います。
  
  
  
  
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