米国の雇用者数は月6万になるー移民政策が経済指標に及ぼす影響おさらいー

このブログでは、今までに何度も米国の反移民政策の悪影響をお伝えしてきました。

簡単に言えば、それは雇用統計が最も良いシナリオで月5万~7万程度になっていく内容であり、今回はそのことを改めてまとめておきます。

 

ここ数年の謎に強い米国経済の原動力は移民

ここ数年、米国経済はサームルールなど色々な理由で景気後退すると言われてきましたが、そういった予測が外れた最大の原因は移民です。移民が経済指標の数字にどう影響するのか知らないと、米国指標の上をいく米国経済の強さ、特に2024年の強さは理解できません。

 

80万人の大幅下方修正でも経済が強いのは移民

例えば雇用統計の事業所調査で、去年8月に80万人以上のマイナス修正がおきましたね。

当時の労働市場は年率比でも悪い数字が目立っていたのでこの修正は強く懸念されました。しかし、大幅下方修正は、こちらのCBSニュースによれば実際に雇用されている移民のカウント漏れが指摘されています。(下方修正については、実際にはもう一つ大きな理由がありますが今回は省略)

※パンデミック後のタイトな労働市場と前年比で比べる考察も良くないです。

 

失業率が高くても経済が強いのも移民

移民は基本的には失業率は低めなのですが、近年急増した移民は仕事探しが間に合わないのか、失業率は高めでした。そのため全体の失業率は高く出やすいのです。しかし移民の数は少なく見積もっても年間250万ぐらいは流入していたため、失業率が高く出ても労働人口が劇的に増えます。

つまり需要と供給が支えられ失業率が上昇しても経済が悪化しないのです。サームルールは失業率だけで景気後退を予測する指標なので、この状況でリセッションを予想しても当たるわけがありません。

 

このように移民の存在は、労働指標において数字よりも実体を強くしていました。

 

米国の移民流入からわかる今後の雇用者数の計算

このように、2024年までは経済指標より強い原因となった移民ですが、今年はそのドーピングがありません。

 

今年の数字は次のようになります。

 

合法移民ビザ60万

米国は合法的に入国できる移民ビザがあり、米国国務省領事局の月次発行数をチェックすると、そのペースは年間60万人ぐらいで推移中です。これは過去数年と同じようなペースで、特に増やしている様子はありません。

 

南部越境移民数は多くて7万か

南部国境からの流入は、ここ数年爆発的に増えた移民の核です。

 

米国税関・国境警備局(CBP)によると、去年まで200万を超えていた遭遇数が、今年は年間14万程度になりそうです。

 

ダラス連銀の資料などを基にすると、多いときで遭遇数の半分が庇護等で準合法的に国内で釈放されます。つまり今年は多めに考えて7万ほどが流入すると言えそうです。(トランプ政権は全く庇護等での受け入れが無いとの話もあります)

 

完全な不法移民も7万程度か

このほか誰にも把握されない、または発見されても逃げきった不法移民がいます。

こういう移民の数は誰も正確に把握できないのですが、僕が色々調べてきた限りでは通常は年間70万ぐらいだと考えられます。しかし今年は遭遇数と同じように激減するはずなので、おそらく多くて10分の1、つまり7万人ぐらいになると見ています。

 

移民の数から逆算すると雇用者数は月6万前後までは落ちる

このように移民の数は、合計で74万人となり大幅に減少します。

米国は出生数が減っていますが、約20年前の出生数は定年数が概ねおなじぐらいだと考えられるので、米国国籍の労働者の純増は除外します。(おそらくプラスマイナス20万ぐらいの差に収まると思います)

 

つまり米国の労働人口は、ベースラインとして年間74万しか増えないことになるわけです。

 

すると今後の米国の雇用者数は月6万程度となります。

 

しかもこの数字は、トランプ政権が庇護等で遭遇数の半分を入国させているという希望的観測と、合法ビザの中の家族もだいぶ含まれています。

 

盛った状態で考えて月6万ということです。

 

強制送還も大打撃になる

さらに現在は、不法移民の強制送還が毎日3000人を目標に行われています。

 

6月のデモの後もこのペースは変わってなく、これは年間で約110万人のペースとなり、もし本当にこのペースが続くなら労働力が激減していきます。仮に全員労働者だとしたら月9万以上減りますね。

 

つまりここまでの状況を整理すると、新規失業保険申請件数などのレイオフ数は伸びにくく、失業率も低めのまま、雇用者数は10万以下に減少し、そして労働人口の実態はこういった統計よりもさらに厳しい状態になっていきます。

 

まとめ 極端なポートフォリオは厳禁

もうお気づきな方もいると思いますが、総合すると今後の米国経済は2024年までとは全く逆になります。

 

2024年までは、経済指標より実態経済は強い状況でしたが、2025年からは経済指標よりも実体が弱い可能性が高まっています。

 

実際にこちらの記事で書いたように、ヒスパニック系失業率から雇用統計にもゆがみが出始めていることがわかります。また、GDPの詳細を見ると個人消費が大幅に落ち始めていますし、多くの経済指標が去年の終わりごろから下降トレンドになっているのもそうです。民間雇用のみでサンプル2500万のADP雇用統計がマイナスになってきたのもそうです。(雇用統計はバースデスモデルという補正により、過大評価されている可能性が高いと僕は思っています)

 

まだ一般的には、ほとんどだれもこの事に気が付いていません。でも僕が調べてきた限りではFRBは間違いなくこのシナリオを警戒していると思います。

 

企業収益の伸びはまだ良好だし、今回の話はゆっくりとジワリジワリと影響するため、直ちに株価が大暴落するとかそういうことではありませんが、個人的にはポートフォリオに弾力を持たせておくのが良いかなと思います。

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