今日は今わかる移民のデータを参考に、今後の米国経済の方向性を考えてみます。
ビザの法的な枠組みや現場の実務など、今回の記事はまだまだ知識不足なので、いつもよりも参考程度に思ってください。
もし間違い等がありましたら、Xやコメントで指摘していただければうれしいです。
まずは合法的なビザの取得数を見てみます。
合法的な移民ビザの取得数
米国国務省領事局の月間移民ビザ発行統計を調べると、2024年の発行数は次のようになっています。
1月 50,517
2月 51,563
3月 53,633
4月 57,383
5月 58,778
6月 52,411
7月 62,167
8月 62,077
9月 57,983
10月 62,832
11月 49,612
12月 50,944
合計 669,900
バイデン元大統領は6月にメキシコから不法に越境してくる移民を制限する大統領令を発表しています。これにより越境移民は大幅に減っていますが、移民ビザでの入国には影響していないようです。
南部国境の移民遭遇数
ではその減っている越境移民についてです。
米国税関国境警備局のデータによると、バイデン政権の大統領令により南部国境での遭遇数は減少、2024年は最終的に2,135,005となりました。(2022年と2023年はそれぞれ2,378,944と、2,475,669)
この数字は遭遇した後に見失った移民などは含まれていないそうです。
越境移民も半分から3分の2は米国の滞在を許される
ダラス連銀の分析を参考にすると、国境で管理下に置かれた移民の半分から3分の2ぐらいは米国の滞在を許されています。ただし仮釈放や内陸への移送は、庇護申請、難民申請、救済措置の扱いなのでビザ発給とは異なります。(その後グリーンカードやビザを取得するケースもあるようです)
つまり2024年に南部国境で管理下に置かれた移民は、106万人~142万人が入国していると考えられます。※ただしどのぐらいが滞在を認められるかは年によって大きく異なるので、以下はその前提でお願いします。
合計流入数は最大250万ぐらいか
この数にプラスして、最初の移民ビザによる流入が約67万あるわけなので、概ね170万~210万人ぐらいが入国、さらに国境で「遭遇」せずカウントされてなかった移民も多いと思いますからざっくり210万~250万ぐらいが流入した、今のところ僕はそう考えています。
ちなみに大統領令の前、議会予算局の予測では300万ぐらいと言われていたので6月以降の急減を考えれば辻褄は合うかなと思います。
2025年の米国雇用統計は毎月3万人前後減る可能性
以上から考えておきたいのは、今後もし南部国境からの越境移民が半減した場合、最大250万から確定の67万を引いて183万人、それが半減で約90万人ぐらいが増えなくなります。
逆に「遭遇洩れ」をほぼゼロで想定するなど、最小基準では106万の50%で53万人ぐらいの減少となります。
つまり米国の人口増が今年一年で見込めなくなる分の目安は、50万人~90万人ということになります。全員が働くわけではなく中には子供もいますが、現役世代の消費の増加ペースをこれだけ減らすのはやはり抑制的になりそうです。
また、仮に半分が労働者になると考えても25万~45万なので、毎月の非農業部門雇用者数は3万前後平均で減ると考えられます。
政府雇用統計、事業所調査の非農業部門雇用者数(NFP)は、世帯調査の就業者数よりも移民のカウントを正確にしているため、影響が出るとしたらNFPのデータにハッキリ出ます。
ただし、NFPも移民のカウントが最大50万(2024年夏の80万人下方修正に関してCBSのこちらの報道を参照)洩れたという指摘があるため、世帯調査よりは「まし」程度です。なお、このCBSの報道には異論を唱える専門家もいます。
雇用以外の影響
こう考えると、労働人口の数字は控えめになりそうです。
その他にも、CPIのサービスや家賃インフレは低下傾向が続くと考えられます。先日CPIが3%となり家賃もサービスインフレも前月比では強く出たのでその印象が強いですが、前年比では二つともしっかり低下が続いています。
また、小売りやサービスへの影響も出ます。
サービスPMIの失速が複数見られること、直近の小売り統計が非常に弱かったことも、何らかの影響を受けている可能性があり、総合すると僕は需要がある程度減退し、物価上昇率は低下、マーケットは利下げ見通しの織り込みを今年後半にかけて深めると思います。
移民の減少で物価は上がらない?
上がるという指摘がほとんどですが、色々理由があり僕は上がらないと考えています。その主な理由は賃金上昇は物価をほとんどけん引していないという複数の研究からです。その辺もまた今度記事にしたいと思います。
さらに注意しておくこと
国境での移民遭遇数がすでに半減していますが、まだトランプ政権発足後の数字がわかりません。
今後もし遭遇数が3分の1ぐらいまで落ちたら最大で122万人ぐらい人口増加が鈍るので、これは結構やばいです。同じように計算すると雇用者数が5万ぐらい平均で減るため毎月10万ちょっとという時が増えそうです。
10万を継続的に切り始め5万を目指すようになったら米国経済は警戒しないといけないので注意が必要です。
まだかなり不確実な目安ですが、僕はしばらくこんな風に考えていこうと思います。
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