米国 6月の雇用統計の実態は良くないことを解説します(2025年7月3日公表分)

米国労働統計局(BLS)によると結果は底堅く良好となりました。しかし、やはり今回も疑って見ておく必要がありそうです。

 

概要

非農業部門雇用者数 +147,000人 (5月 +144,000)

平均時給 36.3ドル (5月 36.22ドル)

平均週労働時間 34.2時間 (5月 34.3時間)

経済的理由のパート就労者 4,465,000 (5月から-159,000)

労働参加率 62.3% (5月 62.4%)

失業率 4.1% (5月 4.2%)

 

事業所調査の民間雇用は大幅に減っている

5月分の上方修正もあり強い結果に見えますが、事業所データの詳細を確認すると民間部門の雇用は前月から半減の74,000しかありませんでした。

 

いつもお伝えしてきた数字に近づいてきましたね。

 

しかし政府雇用が+73,000と、前月からめちゃくちゃ増えています。今回の雇用統計が強い一番の理由は政府雇用の増加と言えそうです。

 

経済にポジティブではない失業率の低下

失業率は改善しました。

 

前回は4.244…%で、4.3%と公表されないぎりぎりでしたが、今回は4.117…%と、しっかり低下しています。一見するとポジティブですが、民間労働力人口のこの3か月の減少が激しすぎる点に注意です。

 

前回は約60万も減っており、今回も13万人減少しました。これはおそらく摘発を恐れた移民労働者を、米国生まれの家族がかばってうちにはいないと伝えている可能性があります。そうなると理屈上は分母と分子の両方が減るため、失業率は変わらず労働力は減るため、経済にはマイナス…

 

なのですが、実は、この偽装回答は、失業率を減少させます。(次を参照)

 

無視できないヒスパニック系失業率の低下

ヒスパニック・ラテン系の3か月連続の失業率低下も無視できません。4月の5.2%から4.8%まで改善しています。

 

移民の失業率は平均よりやや低いのですが、最近急増した移民に限っては高めです。そのため、南部国境からの移民の減少や、偽装回答は、失業率をやや改善させます。これも失業率の改善に比べ経済の減速が起きやすい状況です。

 

ちなみに移民減少による失業率改善の程度は小さいとの研究が主流ですが状況は違います。

 

この3か月の失業率の改善はフェイク

2024年4月から6月にかけて、米国の失業率は4.18%から4.11%へと0.07ポイント改善しました。
実はこの変化のほとんどがラテン・ヒスパニック系の改善によるものだと推定できます。

 

同期間に、ヒスパニック系の失業率は5.21% → 4.75%(▲0.46ポイント)と極端に改善しています。労働力人口ベースで換算すると、約15.8万人の失業者が減少しており、これは全米労働力人口(1億7038万人)の中で約0.093ポイントの失業率改善に相当します。

 

つまり…

全体の失業率改善幅(▲0.07pt)よりも、ヒスパニック系の改善効果(▲0.093pt)のほうが大きかったのです。

 

もちろんこれは、先ほど述べたように実際にヒスパニック系の失業率が特別改善したり、仕事に就けているわけではありません。「うちに住んでるのは米国生まれの私だけですがなにか?」的な回答などがそう見せているわけです。

 

さらにこういった移民に厳しい状況は「ママはしばらく仕事やめて家にいよう」から「ママは職探しやめておく?」と言う流れに繋がり、働く意思が前提の民間労働人口から移民ママがカウントされなくなります。そのため、もしかしたら女性の失業率を数字上改善するかもしれません。ちなみに女性の失業率は、前月は悪化したのですが、今回0.3%ほど改善しました。

 

まとめと今後の展開

今回の雇用統計の強さは、政府雇用の急増が理由です。

 

民間はかなり悪い状況です。

 

そして失業率低下は、見かけ上失業率や失業者が減っているように見えている可能性があり、そう考えておくのが最近の継続失業保険受給者数(法的ステータスがある人々が対象)の急増とも整合性のある見立てです。

 

しかも、度々お伝えしているように非農業部門雇用者数は最近、実体より多く過大評価されていると僕は考えています。

 

まだしばらくは米国経済にややネガティブ寄りな中立を維持していこうと思います。

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