米国 6月のADP雇用統計を分析します(2025年6月分)

ADPリサーチによると、6月の雇用はマイナス33,000となり、減少しました。また、5月の雇用も37,000から29,000に下方修正されています。

 

非情に珍しいマイナス

マイナスになるのはパンデミックの2020年を除くと、この10年で3回しかなく、直近では2023年の3月、シリコンバレー銀行の取り付け騒ぎで銀行危機が意識されたとき以来です。

 

詳細を確認すると、小規模事業者の減少が目立ちます。

 

この事は朝方記事にしたJOLTS求人が強い事とは矛盾せず、どちらが正しいか?ではなく労働市場が減速していると考えて良いと思います。

 

一方で年間の賃金上昇率は+4.4%、転職者で6.8%と5月からわずかに低下していますが、相変わらず物価上昇を大きく上回る上昇です。賃金が充分に高いのに雇用者数がマイナスということは、レイオフなどはまだ積極的ではなく、人員をキープしながら採用や欠員の補充に慎重になっていることを示唆しています。

 

ADP雇用統計のおさらい

ここで少しおさらいですが、ADP雇用統計は賃金計算を基にした2500万のサンプルから雇用者数を導いており、賃金インサイトは1480万のサンプルを基に算出されています。

 

つまり政府雇用統計より圧倒的にサンプル数が多く、個人的には信頼しています。

 

しいて言うなら賃金計算を外注できる企業の雇用しかないので、健全で優良な企業にやや傾いてるかとは思いますが、それでもサンプル数が多いですから米国の雇用の全体像をタイムリーに反映してくれます。ちなみにデータの集計期間は非農業部門雇用者数と同じ期間です。

 

特に賃金については平均時給と違ってボーナスなども含まれるため、実態を知るために僕は最も参考にしている指標になります。

 

雇用のマイナスは無視できない

GDP成長率の長期トレンドは、生産性の伸びと労働人口(総労働時間)の伸びで決まり、成長の波は負債が決めます。

 

そう言う意味で労働人口がマイナスになるということは、明白に成長率低下の因果関係が発生しつつあり、これは去年までの相関関係しかないリセッション懸念と同列ではなく無視できません。

 

今後の展開

政府雇用統計の非農業部門雇用者数(NFP)はまだ底堅いですが、これは度々お伝えしているようにバースデスモデルの補正が過大評価につながっているためだと考えられます。

 

そしてサンプルの多いADP雇用統計が、前回に続いて今回も大幅悪化となったことは、毎月の雇用者数が5万~7万に落ちていくというこのブログの見立てを裏付けてくれます。

 

というわけで、米国の雇用者数を正確に反映しているのは現状ADP雇用統計であるとの確信をやや高めました。僕のこの仮説が判明するまでに早くて8月末、遅ければ来年の2~3月となるため、もうしばらく静観が必要ですが、まずは今夜の政府雇用統計もチェックしてみましょう。

 

データの出展元:ADPリサーチ・インスティテュート「ADP全米雇用報告(ADP Employment Report)」、https://www.adpri.org/

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