イタリアの例から今後の米国経済を考える

イタリアのメローニ首相が演説してる動画が流れてきました。

 

その動画は「左派が自分たちを非難していたけど、移民追放し、国は成長し、雇用は過去最高に改善した」という趣旨のものです。

 

この演説は左派に関係なく経済的に客観してる立場だと、イタリアの苦しい現状をうまく隠しているなと感じます。

 

それが今後の米国経済を考える上で参考になる、今回はそんな内容です。

 

イタリアの経済

雇用が改善というのはおそらく失業率の事だと思いますが、イタリアは10年前に12%ぐらいあった失業率が大きく改善し、最近は6%ぐらいになっています。

 

一方で、超低空飛行ではあるものの、ユーロ圏全体よりやや良い傾向にあった年間成長率は、この半年ユーロ圏全体が成長し始めているのに、半減したまま伸びなくなっています。(この数年、ヨーロッパは色々難題があったのでユーロ圏全体と比較しています)

 

移民だけが影響したとは言えませんが、これはかなりしっくりくる結果です。

 

移民は失業率が高いと意味がない

実のところ労働者を増やす恩恵は失業率が高い状態だとあまり意味がありません。

 

つまり失業率が高かったイタリアは、移民を追放するデメリットがありませんでした。

 

ところが労働者が不足し失業率が下がってくると、成長がきつくなってきます。そのためイタリアは雇用が改善しているのに成長はしにくい状況になりつつあります。

 

つまりメローニ首相の演説は事実ですが、成長が力強いとは言えない演説なのです。

 

米国の成長を分解

米国の場合、失業率はもう少し低いので、移民を受け入れないデメリットはより深刻になります。

 

以下でそれを考えてみます。

 

非農業部門全労働者労働生産性は、上昇率が2%ぐらいあります。

U.S. Bureau of Labor Statistics, Nonfarm Business Sector: Labor Productivity (Output per Hour) for All Workers [OPHNFB], retrieved from FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis; https://fred.stlouisfed.org/series/OPHNFB, March 29, 2025.

 

成長率は、生産性と労働人口の伸びですから、次に労働人口の伸びを考えてみます。

 

労働人口は約1億6000万です。出生数と死亡数はざっくりおなじぐらいなので抜きにして考えます。

 

去年の移民流入が約250万~330万、僕は250万ぐらいになったと考えているのでこの数だと、労働人口に対し1.5%増ぐらい、でも移民には家族がいるので全員が労働者ではありません。

 

仮に3分の2が労働者だったとするとざっくり計算して労働人口は1%増となります。

 

めちゃくちゃざっくりですが、去年の米国の通年成長率が2.8%なので、生産性2%と労働人口増1%で似たような数字になるので概ね合っていると思います。

 

つまり移民流入が仮にゼロまで落ちた場合には、生産性の2%程度の成長に限定されます。

 

実際には移民ビザによる合法流入が60万人ぐらいいるはずなのでゼロにはならずプラス、一方関税懸念や消費者心理の悪化で経済が委縮するのでマイナス、この他に輸出入や負債の増減など色々綱引きをしますが、いずれにしても米国経済のように失業率がやや低めの国では、移民流入が激減すれば人手不足が深刻化し、イタリアよりもその影響は出てきます。

 

というわけで、メローニ首相の演説で米国経済を誤認するのは避けたいところです。

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