米国のCPI上昇率と小売売上の上昇率が変わらないトリックを解説します

さきほど過去4年間の小売売上高とCPIの上昇率がほとんど変わらない、むしろ物価のほうが上昇率が高いというポストをみかけました。

 

このデータは、一見米国人の消費が物価上昇程度しか伸びていないと錯覚します。

 

米国経済指標を見続けてきた僕としては、この指摘は誤解を生む指摘だと思うので、真相を解説します。

 

小売りの方が上昇している

確認したところ2021年1月から直近のデータではこのようになっていました。

  • 小売売上高(名目):+23.2%
  • 総合CPI(ヘッドライン):+22.1%
  • コアCPI(食エネ除く):+20.9%

 

僕がみたポストと期間がずれているのか、この期間であればしっかり小売りが強いです。

 

企業業績は32.3%上昇

さらに、同じ期間(2021年Q1~2025年Q1)で企業業績を調べたところ、脅威の32.3%上昇していました。※IVAおよびCCAdjを除く

 

つまりコアCPIよりも10%以上、富を生んでいたことになります。

 

思い込みが小売りと物価を見誤らせる

このように実際にはしっかり小売りも企業業績も、実質で伸びています。

 

しかしインフレに対し小売りが弱く見えるかもしれません。

 

でも僕の見解では、これは購買力が伸びていないのではなく、購買力の上昇がインフレをけん引したと見ています。

 

コストプッシュインフレという思い込み

僕の見立てでは、米国はもうコストプッシュインフレが主体である期間がとっくに終わっています。

 

いつ終わったかと言うと、2022年6月です。

 

なぜなら時差6か月で米国CPIに影響する中国PPIや、物流制約を表すGSCPIがこの年の1月から急激に鈍化していたからです。

 

つまり供給制約、物流制約は3年前に終わったのです。

 

CPIはサービスインフレにかかっている

さらにCPIは、サービスインフレの上昇(直近1年で+3.7%)が全体をけん引しています。

 

その中でも特に家賃の上昇がきつく、家賃(シェルター)を除くと、CPI全体の上昇はこの1年でたったの1.5%になります。

 

参考までに耐久財の年間上昇率は0%、非耐久財は-0.1%、食品と飲料を除く非耐久財は-3.6%です。(BLSの参考資料

 

いかにサービスインフレ、特に家賃が問題だったかがわかります。

 

そして家賃やサービスインフレというのは、需要の上昇が価格を押し上げやすい典型的なカテゴリーです。

 

まとめ 需要の増加が物価を押し上げてきた

CPIの上昇の主因が、実のところ需要の増加によって相当続いてきたというのは、CPIの詳細を見ていれば気が付くものでした。

 

それは

・供給能力が正常に戻っている

・物流制約が低減している

・総需要に左右されるサービスや家賃インフレが物価を押し上げていた

 

この事から、小売売上と物価上昇が同じだからといって、購買力が上昇していないと考えるのは、実体とは違います。

 

実際は、購買力の増加が、物価を押し上げてきたと考えられます。

 

以上、物価と小売売上高が同じ上昇率のトリックでした。

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