米国経済がまだリセッション入りしていないことがわかる状況を整理しました。
雇用と生産性
👉新規失業保険申請件数
まだ20~25万の間をうろうろしており、これは過去の後退局面で言えば大幅に少ないです。一般的な解釈ではリセッションは40万程度まで上昇すると言われてます。
👉継続失業保険受給者数
この数か月上昇はしているけど、これもまだ200万以下で多くはありません。景気後退は240万とかそのぐらいになります。
👉総労働時間
雇用者数の増加が鈍っているだけで総労働時間はまだ減っていません。成長は生産性と総労働時間、波の部分は負債なので、銀行信用などが増えていれば少なくてもまだマイナスにはなりようがないです。
👉生産性
前期比年率で3.3%、前年比1.5%であり、これは一時的な下押しなどを除外して単純に考えれば、労働人口の伸びがゼロでもプラス圏を維持するレベルです。
【補足】
現在の🇺🇸はレイオフが増えにくいまま景気が減速する構造になっているので、始めの二つの指標は今までより厳しめに見た方が良いとは思います。たとえば新規失業保険なら30万までいけば僕はリセッションを考えるかも。
それと、この二つは古い時代だともっと少ない水準でリセッションしてると気づく人もいるかもね。でもこれは保険加入者や労働者の数自体が少ない背景があるためで、現代では当時をベースに考えなくてもいいと思います。
金融環境
👉セントルイス連銀金融ストレス指数
大幅にマイナス、つまり高金利であっても実は金融環境はゆるゆるってことです。
👉シカゴ連銀ANFCI
これも大幅マイナス、これも同じで金融環境はめっちゃゆるい。パンデミックを除くと、ANFCIは景気後退の前に、程度はどうあれ必ずプラス圏まで浮上しています。逆イールドやサームルールみたいな景気後退するしないの法則なんて、話題にならないものは実はいくらでもあるのです。
👉企業融資を厳格化する銀行の純割合
2023年、優良大企業のGDP予測が一時マイナス寸前まで落ちたことがあったのですが、その当時の環境でだいたい50%まで増えていました。しかし今(8月4日データ)は10%以下まで落ちています。一定の緊張感はある数字だけどそれでも低いです。
👉銀行信用の伸び
そんなわけで融資が縮むわけもないし、前年比で5%ぐらい伸びており収縮していません。誰かのローンは全額誰かの売り上げです。
つまり信用の増加中に、生産性と総労働時間がプラスでマイナス成長になるというのは、現実的な分析ではないです。
総合的にGDPを予測する指標
👉アトランタ連銀GDPnow
余裕のプラス成長、輸出入で押し上げられてはいるけど、それを差し引いてもプラスです。
👉WEI(Lewis-Mertens-Stock)
現在2.5%以上あり、とてもリセッションといえる状況ではないです。この指標は燃料価格や鉄道輸送、電力負荷など実体経済に近いデータから算出されます。
その他
👉NBERが見そうな指標
リセッションを正式に認定するNBER(全米経済研究所)が重視しそうなものとして、鉄鋼業生産、工業製品の推移がありますが、この数年の低水準から緩やかに回復基調です。※ただし電気ガスなど公益事業は弱い。
👉その他詰め合わせ
飛行機が飛んでいる数、地下鉄の利用者の数、鉄道輸送量など、色々チェックしていますが、総合的にみて米国経済がすでにリセッション入りしている可能性はほとんどありません。
ただし、基調的な減速は続いていくので、こまめに指標をみていきましょう。
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