短期的にはいろいろもめてますが、最近インド経済の指標が安定と強さ両方を備える内容になってきていると思います。これは途上国から先進国へ向けた本格的な成長が始まる準備が整った状況に見えるので、投資することにしました。
そこで今回は、インド経済にポジティブになってきた理由と、考えておいた懸念事項をお伝えします。
良いと思う最近の変化
例えば👇
- 豊作もありインフレ率が1.55%まで低下
- 失業率が5%代まで低下
- 製造業PMIが急上昇
- 原油安
- 米債長期金利の低下
特にインフレ率の急低下と、失業率の低下両方が起きている点が理想的です。
CPIの低下
CPIの低下は、昨年起きたサイクロンの影響解消により食品価格が低下したことなどが影響しています。
インドはまだCPIの食費比率が40%以上あり、食費が低下することによる実質賃金の改善効果は非常に大きいと思います。CPIの低下が個人消費や小売りを底上げすることは、2022年の米国でも僕は見てきたし、昨年の欧州などでも見られている重要ポイントです。
CPIの低下は、利下げの継続、通貨安の抑制、実質賃金の向上、消費拡大、住宅投資の増加、耐久財の購入、外資の回帰、雇用創出などの効果が期待されます。
失業率の低下
失業率低下についてもかなりポジティブな要因です。
インドは一般的に労働人口が多いのが強みだと言われますよね。しかし実はこの認識、失業率が高いとあまり意味がありません。
そのため僕は、インドの失業率が下がるのを長い間待っていました。
今のインドで失業率の低下が起きているということは、労働人口を上回る雇用の創出が始まったということです。
失業率の低下は、総需要の増加、賃金上昇、消費拡大、GDP上昇、外資回帰、インフラ水準の上昇などが予想されます。
PMI急上昇
S&Pグローバルによれば、インドのサービスPMIが改善しており、サービス部門は15年ぶりの高水準となっています。
これはインフレ率の低下や、利下げによるものですが、雇用促進、賃金の上昇、消費拡大、外資の回帰、投資の拡大、通貨安抑制などの効果が期待できます。
原油安
インドは原油を輸入に頼る国で、原油価格が上昇すると、経済を大いに圧迫します。その原油価格が低下を始めているので、貿易赤字縮小、通貨安抑制、外資の回帰、利下継続、消費拡大、PMI改善継続など、様々な恩恵が期待できます。
米債長期金利低下
米債の長期金利低下は、インドの通貨安を抑制します。
利下げを継続し消費が拡大しそうなときに通貨安を抑制できれば、インフレを抑制することになり、非常にタイミングが良いです。
また、インド経済の足かせになっているのは、実質金利の高さもあるのですが、米長期金利の低下により利下げが継続できればインドの実質金利が下がるため、個人消費などが力強く改善する可能性があります。
懸念事項
懸念ももちろんあります。
しかし、長期的にはさほど問題ではないことが多い印象です。
関税対米摩擦
インドが米国と最近もめているのは懸念のひとつです。
しかし、インド経済は内需85%で、対米貿易の対GDP比は2%程度なので僕は懸念していません。むしろ、対米貿易より農業を守り地方の支持者を優先したモデイ首相の判断はインド経済にプラスだと考えられます。
また、インドは6月にEV車の完成品にかかる関税を条件付きで110%から15%まで引き下げています。これはテスラにとって非常に有利な決定で、モデイ首相は米国を突き放したように見えてしっかりバランスのとれた外交をしていると言えます。
ちなみにモデイ首相は、もともと寺院の前でお茶を売る貧しい家庭の子供で、生粋の成り上がりです。世界の指導者の中で地頭の良さはトップクラスなので貿易も外交も心配する必要はないと思います。
財政
財政赤字(GDP比で年4.8%)を悪いと言う専門家もいます。
でも年6%成長する国にとっては、1年分で取り戻せる増加分なので、全体では減るロジックです。なので約81%あるGDP比政府債務は低下傾向です。
経常収支も改善基調です。
経常収支が数年大きくマイナスになったあとは、国内経済が失速することがあるのですが、そういった事も考えにくく、利下げをしてもルピー安は限定的だと僕は考えています。
最近、S&Pはインドに対する18年ぶりの格上げを行っているのですが、タイミング的にも非常に適切です。
地政学的リスク
パキスタンとのリスクは相変わらず高いです。
しかし、お互い核を持ってるので全面戦争はできません。また、モデイ首相はヒンズゥー至上主義が支持基盤なので、支持層への配慮と、報復の強度を冷静に見るべきです。
モデイ首相の全方位外交であれば、致命的な事態にはならないと思います。
原油高
インド経済のアキレス腱は二つあり、ひとつは原油高です。
コントロールできない懸念であり、今後原油価格の上昇がおきれば、ルピー安も物価高も進み、利下げができなくなるし、そのときはしばらく成長おあずけです。
でも今のところ、原油価格は低下基調です。
天候悪化
インド経済のアキレス腱の二つ目は天気です。
インドは食費の影響が大きいと初めのほうで触れましたが、サイクロンがきてジャガイモやトマトなどの農作物が不作になると食費が高騰し一般市民の生活が急激に苦しくなります。
2025年のインド経済の不調は、2024年のサイクロンによって、農作物の価格が上昇してしまった影響が大きいです。※逆に言えば今年は改善したのでチャンスということです。
サイクロンについては、インドの天気予報を追跡し始めたので、何か変化があればXアカウントでなるべくお伝えしたいと思います。
総合判断
総合的に考えて、インド経済はポジティブになると考えられます。
特に、前半触れた経済指標の変化で、僕は同じ効果を何度も書いているのですが、実はこれが大事なことで、インドはいくつものポジティブな要因が重なり合って効果を発揮しやすい状況になっています。
つまり、力強い成長だけでなく、安定し始めているということです。
懸念事項はもちろんありますが、個人的には米債長期金利は低下していくと見ているので、実質的な懸念は原油高と、天気だけです。
ちなみに、マーケットの平均的プレイヤーはインド経済のここに書いたような変化に気が付いていないです。
なぜかというと、2022年の米国や、2024年の欧州でも、実質賃金の改善が見込めそうになり、経済全体が改善し始めていたのですが、マーケットは全く気が付いていなかったからです。
もし中東が安定し、天気も良ければ、来年最も株価が上昇するのはインドだと考えます。
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