インデックス運用の優位性を正しく理解していない方は意外と多いので、今日はこのテーマで記事にしてみます。
仕組みの本質
アクティブ運用も「平均したらインデックス運用」になります。
誰かが市場平均より上回ったら、必ず誰かが市場平均より下回り、そこにコストが上乗せされます。
その結果、「平均からコスト分だけマイナス」にするので、長く続ければ続けるほどアクティブ運用は負けやすくなる必然があります。
研究
Sharpe (1991)「The Arithmetic of Active Management」
ノーベル賞経済学者ウィリアム・シャープが示した有名な論文です。
ロジックはシンプルで最初に書いた通り、市場とは全ての投資家の合計であり、アクティブ投資家の平均とは市場平均、そこから「コスト(手数料・売買コスト)」を引くと必ずインデックスに劣後するというものです。
科学的に「アクティブはゼロサム、コスト込みでマイナスサム」と証明しています。
Fama & French(2009)「Luck Versus Skill in the Cross Section of Mutual Fund Returns」
この研究ではファンドマネージャーの超過リターンが「運(ランダム性)」によるものか「スキル」によるものかを検証しています。
結果は、ほとんど「運」でした。
Pastor & Stambaugh (2012) 「On the Size of the Active Management Industry」
研究によれば、アクティブ運用には「スキルを持つ人」もいるけれど、彼らが得られる超過リターンは 市場の非効率性に依存するとしています。
ところがアクティブファンドに資金流入が増えると市場は効率化され、スキルがあっても「おいしい歪み」が減ってしまう。その結果、業界全体としてのアクティブ運用の超過リターンは資産規模が大きくなるほど小さくなるというものです。
これは一見、個人投資家には関係ないように感じますが、アクティブ運用の個人投資家も、結局集まれば大きなアクティブファンドと同じですから、歪みは実際問題ほとんどないことになります。
Ikenberry Lakonishok and Shleifer (1998) 「Why Do Managed Funds Underperform?」
この研究では、アクティブ運用ファンドがS&P 500インデックスに対してしばしば劣後する理由を、以下の2つの要因から説明しています。
ひとつは均等なポートフォリオです。
アクティブ運用者は投資対象を均等にする傾向があり、この傾向は相対的に小型株のリターンが大きい時期には有利に働きますが、大型株が優位な時期には不利となり、長期的には市場平均に劣後するというものです。
もうひとつはリターンの歪度(スキュー)です。
株式のリターンは正の歪度を持つことが多く、平均リターンが中央値を上回る傾向があります。つまり、ごく少数が平均を押し上げるので、投資対象の少ないアクティブ運用はそれを取りこぼすということです。
論文によれば、35銘柄でその影響は小さくなりますが、150銘柄でもまだ影響はハッキリとあるようです。
結果
SPIVA(S&P Indices Versus Active)レポート
S&Pが毎年公表しているアクティブファンドの実績調査です。米国株で見ると、10〜20年の長期でインデックスに勝ち残るファンドは少ないです。
Morningstar 「Active Passive Barometer」
モーニングスター社が提供する半年ごとの「Active Passive Barometer」レポートでは、過去1年間の単年成績でアクティブ運用の多くはインデックス運用に劣っています。
また、長期的(10年程度)に見ても、アクティブファンドの成功率は低く、平均的にはパッシブ運用に劣る傾向が一貫して確認されています。
Barber&Odean(2000年)「Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors」
この研究では、1991年から1996年にかけて大手証券会社に口座を保有していた66,465世帯を調査しています。
最も取引量の多い世帯の年間リターンは11.4%、平均的な世帯は年間16.4%のリターンでした。市場全体のリターンは17.9%であると述べています。平均的には年間でポートフォリオの75%を売買していました。
サンプルが多いので、平均ではインデックスに近いですが、取引回数が多いほどパフォーマンスが悪い明確な傾向があります。このことは過度な自信が、アクティブ運用を合理的だと誤認させていると言えそうです。
また、アクティブ運用は損切りなどしないわけにいかないので、取引をほぼしないインデックス運用が優位と考えられます。
ile的考察
僕が思う需要なことは、4つです。
1つ目は、アクティブ運用は均せばインデックス、つまり超過リターンはゼロサムゲームということです。
2つ目はコストです。ゼロサムにコストがかかるので、期待値はマイナスになります。
3つ目は、少数アクティブ運用の偏ったポートフォリオには弾力、現金が必要な点です。キャッシュポジション込みのリターンは渋いものです。
最後の4つ目は、アクティブ運用では損切りが必要なことです。
時期にもよりますが、過去100年の株式の時価総額は上昇し続け、同時に年間の標準偏差は15%前後ありました。この事実は、広く分散された長期投資なら、損切りをしないほうが有利だと言えます。
逆に投資本でよくある「マイナス10%で損切り」などをしていたら、標準偏差以下なので、増やせるものも増えるわけがありません。
しかし、少数のアクティブ運用では、例え非合理的でも連敗確率や最大ドローダウンを考慮すれば損切りせざるを得ないのです。
インデックス運用は、理論的にも、実際のデータにおいても、この4つの要素においても、全ての点で有利です。
唯一の欠点は、おもしろくないことですね。
なのでポートフォリオの10%ぐらいでアクティブに運用するのがちょうどいいかなと僕は思っています。
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