僕はチャートを気にしないのですが、今日はテクニカル分析について記事にします。
賛否両論あると思いますが、テクニカル分析で売買する投資家は、そうでない投資家に比べパフォーマンスを悪化させると考えています。
テクニカル分析を検証する大規模な研究
マーストリヒト大学のアーヴィド・ホフマン氏とサンタクララ大学のハーシュ・シェフリン氏は、2000年から2006年にかけてオランダ人投資家の実際の取引記録を分析しました。(フォーブス誌で紹介されたソース記事)
この研究は証券会社が協力する形で行われ、サンプルは実際の取引データを照合できる約5,500人分でした。
その結果、投資でテクニカル分析を使用する投資家は、チャートを使用しない投資家に比べ、平均してひと月0.5%+追加取引コストで0.2%、年間で8.4%もパフォーマンスを悪化させることを発見しました。
おそろしいですね。
世間にはテクニカル分析のノウハウがあふれていても、実体はこれです。
同様の研究は複数あります。
ニュージーランドのマッセイ大学の教授による研究では、5,000以上のテクニカル取引ルールが付加価値をもたらすかどうかを検証しました。(CBSニュースのソース記事)
しかし、この研究でも利益がコストを上回るほど期待できる証拠は見つからなかったようです。
他にもありますが総合するとコストを上回るのは難しいという論調が多いようです。
偶然と思い込みで優位に見える
もちろん有効とする研究もあります。
ただ、調べた限りでは上記のような包括的な研究はちょっと見つからず…
今のところ僕は、テクニカル分析が本当に有効だとは考えにくいかなと思います。
優位性があるとの研究も、データドレッジや、データスヌーピングバイスが効いてしまった可能性が高いと考えられます。
データドレッジとは関係ない二つのデータ推移が、同じように相関してるように見えることです。
例えば米国で毎回開催される単語のスペル大会の文字数と、毒グモの死者数の推移には相関があります。
でももちろん因果関係はありません。
データスヌーピングバイアスとは、同じデータセットを何度も使って多数の仮説やモデルを検証することで、偶然にうまくフィットしてしまった結果を“意味がある”と誤認してしまうことです。
特に、否定的な結論となったマッセイ大学の研究では、このデータスヌーピングバイアスが考慮された結果となっています。
後付けならテクニカル分析で説明できる
テクニカル分析の純粋なリターンとされるものが思い込みや後付けだと想像するのはかなり簡単です。
例えば僕は大暴落で買います。
買ってるものは全世界株なので、基本的に右肩上がりです。
これをチャートで言うと、大陰線や下落の三空などが発生した時にまとめて買うルールになります。
もっと言えば下落から上昇トレンド転換サインで買えばどこだろうとプラスになります。
しかし当たり前ですが、それは単にチャートでタイミングを決定してるだけで上昇すること自体はチャートから情報を得ていないのです。
全世界株のように明らかに上昇する背景要因があればテクニカル分析は関係ないと自覚しますが、もしそれを自覚していなければどうでしょうか?
テクニカル分析が有効だと誤認するはずです。
それしか説明できない状態ならなおさらです。
低確率なものほど思い込みやすい
偶然や思い込みだけでは説明できないよなあ…
と言う考えもわかります。
世の中にはテクニカル分析で大きな利益を生んでいるトレーダーがいることも事実です。
話は少し脱線しますが、そういう方は単にドローダウンを無視しただけというケースもあり、一瞬で儲けて、一瞬で消えることがよくあります。
勝てば2倍、負ければ半分、勝率50%で、10万円からスタートし、5億円に到達する可能性は、AIによると約5000人に一人だそうです。
ですがこの取引はほぼ確実に破産に向かう負けトレードです。
確率的に何千何万の投資家がいれば生まれてくるし、その中には大敗前にインデックス投資などに切り替えて継続できる人もいます。
でも平均的な人が勝っていくにはこういう姿を模倣しても成功するはずがありません。
投資の難しいところはドローダウンを無視した成功者の模倣では勝てないということです。
テクニカル分析の優位性についても現実的にはこれに近い相当な誤認が含まれている可能性があり、偶然や思い込みが見えずらいと考えられます。
逆に因果関係を重視する人は、テクニカル分析に一定の距離を感じているのではないでしょうか。
そんな中で、冒頭で紹介した研究は、相場の常識よりも自分にとって何が正しいのか考える良い素材になるし、投資の実体をよく表していると思います。
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