米国労働統計局によると、2025年5月の米国の輸入物価は、前月比で0%と変化なし、前年同月比で+0.2%となりました。
輸入物価の現状をチェック
詳細を見ると、燃料輸入が前月比で-4%(前年同月比-15.7%)となっており、価格を抑えた主因です。
しかし、燃料以外の輸入も1月から順番に、0%、0.2%、-0.1%、0.4%、0.3%と弱めです。(前年同月比1.7%)
そのため燃料を抜きに考えても平常運転です。
4月5月でやや高い結果になっていますが、これはおそらく駆け込み需要で一時的に物品が不足したり、輸送運賃がフル稼働になりコストが上昇したのかなと思います。
主要輸入元別の物価動向
資料を見ると、この一年で主要3か国からの輸入物価は次のように変化しています。
メキシコ +0.9%
中国 -2.1%
カナダ -2.3%
3か国の生産者物価指数(PPI)を見ても、すべて低下傾向です。
そのためこの状況はまだ続きます。
PPIの減少が続いている以上、輸入品が急激に上昇していくことは考えにくいです。
海運コストと物流の最新事情
最近、国際的なばら積み貨物船の運賃(バルチック海運指数)が上昇しています。
一部のひとはこれを物価本格上昇の先駆けと考えていますが、上昇している理由は鉄鉱石やボーキサイトのブラジル・西アフリカ → 中国ルートの貨物量が増加しているためです。(参考記事はこちら)
また、物流抑制を表すNY連銀のGSCPIもゼロ付近であるため、構造的に世界の輸入物価が上昇していくという状況にはなっていません。
関税でも物価が上昇しにくい理由
関税騒動で物価の強い再上昇を懸念する声は多いですが、このブログではそれは限定的だとお伝えしてきました。
その理由を簡単にまとめるとこうなります。
- 第1次トランプ政権時の関税では、ほとんど物価を押し上げていなかった
- 関税による物価上昇懸念は需要が同じまま試算されているものがある
- 物価上昇に匹敵するぐらい経済失速のデフレ圧力は強力である
- 米国では家賃の鈍化などで根底の部分では物価低下の圧力が続いている
- ダラス連銀のアンケート調査で企業は価格転嫁する場合は早く行うと答えていた
今回の輸入物価は、物価上昇が限定的であるという見立てをより強めてくれました。
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