米国労働統計局によると5月の雇用統計は次のようになりました。詳細はこちらを参照ください。
概況
事業所調査
非農業部門雇用者数(NFP) +139,000人
世帯調査
※単位千 カッコ内は前月比
民間労働力 170,510 (-625)
就業者 163,273 (-697)
失業者 7,237 (+71) ※失業率 4.2%で前月と変わらず
経済的理由によるパートタイム労働者数 4,624 (-66)
仕事の減少など雇用主側の事情 3,007 (-141)
パートしか見つけられなかったケース 1,385(+125)
パッと見た印象は底堅い
139,000の雇用者数は、多くは無いですが悪くない数字です。
12か月にすれば170万近い増加になりますからね。
失業率も変わらず4.2%を維持しているし、パートタイムも全体的には増加してないため、底堅さは間違いなくあると言えます。
ただ、今回の雇用統計をよく見ると、少し失速している状況が見えてきます。
分解すると経済の失速も見える
まず失業率ですが、計算すると4.244…%なので、4.3%と表記されなかったギリギリでした。
これは来月の失業率が4.3%になりやすい状況です。
また、民間労働力が大幅に減りました。
民間労働力とは、16歳以上の人口のうち軍人と施設入所者を除いた人々から、現在働いているか、仕事を探している人に限定した総数です。
多少ぶれが大きいときもあるのですが、これが大きく減ったことで失業率の悪化が小幅で済みました。
つまり今回の雇用統計を一言で言えば、労働参加率の低下が、失業率の悪化を隠しています。
失業率よりも悪化している可能性がある雇用者数
個人的には今の米国経済は失業率よりも雇用者数のほうが悪化が目立つと思っていました。
しかし雇用者数が14万近くあります。
今年のNFPは底堅い強さが続くなか、ADP雇用統計は悪化傾向で、新規失業保険申請も継続失業保険申請も増加しています。労働人口増加ペースを分解しても、NFPの強さには少し違和感を感じます。
ひとつの可能性としては、起業と廃業による雇用創出を推計するバースデスモデルに、過大評価が起きているかもしれません。
バースデスモデルは年次改定で大幅下方修正があると定番で疑われるネタなのですが、去年マイナス80万以上の下方修正も、やはり原因として考えられています。(エコノミストの西田明弘氏による参考記事)
ちなみにこの数年、米国では新規ビジネスの立ち上げが激増しています。
昨年バースデスモデルは改良されたのですが、調べてみると改良バージョンは4-10月に試験的に導入され、その後は適用されていないようです。(BLSの関連記事)
おそらく3~5月あたりの雇用統計は、毎月平均で2万~3万ぐらい多めに出ているのではないかと僕は考えています。
あくまで僕の仮説ですが、仮にそうだとすればさほど違和感のない数字になります。
ちなみに西田氏の参考記事にある表では、新規ビジネスがほどほど程度だった2019年にも大幅下方修正がされています。この原因は、当時1990年までさかのぼるベンチマークの改定があり、それが下方修正の主因だと思うので別の事情と考えてください(BLSの参考資料)
今回の考察はまだまだ不確実な話です。
ただ、他の指標とずれを感じること、そして米国に年間170万もの労働人口の増加が起きるとは考えにくい状況から、ネガティブな側面両方にも引き続き目を向けていくべきかと思います。
もちろん底堅さもあるし、まだリセッションには少し距離はあると思いますけどね!
そんな感じで引き続き来週も見ていこうと思います。
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