米国の貿易収支が大赤字でもドルが弱体化しない簡単な理由

貿易収支が大幅赤字であることを、トランプ政権が盛んに問題視しています。

 

関税をかけたり、支持者に訴えるわかりやすい口実になっていますが、実のところ米国の貿易赤字は全く問題ありません。

 

今回はそれを簡単に説明します。

 

2つのマイナス

それは経常収支が赤字になればなるほど、金融収支が黒字になる構造になっているからです。

 

2024年の経常収支はこうなっています。※数字の出典は末尾に記載

 

・貿易収支(輸入・輸出)→ 1兆2,120億ドルの赤字

・サービス収支(テックが海外で稼ぐお金など)→ 2,970億ドルの黒字

・第一次所得収支(金融資産の利子や配当など)→ 140億ドルの赤字

・第二次所得収支(海外援助など)→ 2000億ドルの赤字

 

差し引き(経常収支)は、1兆1300億ドル赤字です。

 

経常収支だけ見れば真っ赤っかなので、これだけ見ればドルは衰退、米国終了です。

 

ところが、経常収支とは別枠のもので金融収支があります。

 

金融収支とは、海外からの預金や、株式の投資などですね。

 

その金融収支は、マイナス1兆2,700億ドルです。

 

金融収支がマイナスとは、つまり海外から米国への資金流入が流出を上回っていることになります。

 

※金融収支のマイナスを、一般的には逆の意味で説明することがあるので注意してください。マイナスの実体は流入であることは出典元資料にも記載されています。

 

貿易が真っ赤でもドルの価値が維持されるからくり

米国の貿易赤字は海外の誰かの儲けです。

 

それは最終的に米国銀行などに貯金されたり米国債や米国株へ投資されます。

 

だから経常収支が赤字になるほど金融収支が黒字になるのです。

 

このバランスがとれているので、ドルの価値は壊れません。

 

1970年代から米国は貿易赤字が目立っているので、よく貿易赤字でも問題ない理由として「何十年もドルは強いから大丈夫」と言われますが、それは結果であり構造はこうなっています。

 

トランプ政権の「貿易赤字が国を弱体化させる」というのは、このからくりを知らない人用の宣伝文句ですね。

 

バランスが崩れる時

でもこのバランスが崩れるシナリオがひとつあります。

 

それはドルが基軸通貨ではなくなるときです。

 

その時世界中の人は、ドル建て資産で儲けを保管しようとしなくなります。

 

これは、経常収支のマイナスを、金融収支の実態としての流入で維持できなくなるときです。

 

だからドルが基軸通貨であることは非常に大事なことです。

 

以上、貿易赤字でも米国は大丈夫な理由でした。

 

※今回の記事中にある数字は、米国経済分析局のこちらの資料より引用しました。

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