米国のサービス部門の動向と、7月の回復を確認しておきます。
※始めの二つの指標は、民間の調査のため具体的な数字の引用は控えています。ご了承ください。
S&PグローバルサービスPMI
S&Pグローバルによると、年初来で最も強い成長となりました。
新規受注が増加、雇用も僅かに増加しています。一方、新規の輸出受注は4か月連続で減少している点には注意です。
投入コストは6月から加速し顧客へ転嫁しているとの報告があるようです。
ISM非製造業指数
ISMのほうは全体として拡大となりましたが僅かで、新規受注も小幅、雇用は縮小が続いています。
価格は強めの上昇が起きています。
2つの指標からみる実体経済
結果は似ていますが強さの違いに違和感も感じる結果ですね。
二つの指標は、異なる結果になることがよくあります。原因のひとつは調査対象の違いです。
S&Pグローバルは民間企業を幅広く網羅し中小企業も多く含みます。そのため肌感に近い民間の影響を強く受ける特徴があります。一方でISM非製造業指数は、相対的にですが大企業が多かったり、政府支出に間接的な影響を受けやすい業種が多いです。そのため実体経済の様子と乖離することがあります。
これらの違いや、他の指標を総合的に考慮すると、米国経済は6月の強い減速から、7月にかけて民間部門が急に回復した可能性があります。
他の指標も7月の回復を示唆
他の指標も触れていきましょう。
例えば民間の雇用に特化しているADP雇用統計も、同じ期間にマイナスまで悪化した状態から急回復しました。新規失業保険申請件数も、6月初めには強めに増加していましたが7月は明確に低下(改善)です。継続失業保険受給者数も増加が止まったという意味では同じです。
また、ダラス連銀の展望調査でも、6月に比べ7月は回復した兆候があります。悪化だけで言えば、6月はCPIでもホテル価格の下落が非情に強く観光業などが悪化したと考えられます。JOLTS求人でも観光・飲食サービスが強めにダメージを受けていたと考えられます。(7月はまだなので未確認)
米国経済には一定の底堅さ
以上のことから、米国の経済、特に民間のサービス部門は6月の悪化から7月にかけ、回復したと考えられます。
この回復がゆっくりとした基調的な減速を食い止めるほどの転換点になるとは考えていませんが、少なくても雇用統計から話題になっている急激な悪化、このまま「夏の終わりにはリセッション」みたいなシナリオは行き過ぎです。
その他 コスト上昇について
それともうひとつ、二つの指標からはコストの上昇が明確になっています。
ただし、購買担当者調査のコスト指数は、数字ほど実際の価格には反映されないことも多く、共通の傾向ではありますがこれだけで見通しを変化させるべきかは疑問です。
例えば、今現在クリーブランド連銀のインフレナウキャストでは、7月CPIの前年比が2.72%、8月が2.79%と上昇が予想されていますが、コアCPIはそれぞれ3.04%と、3.02%で減速しているのです。ちなみに8月分のCPIは、もともと2.9%でした。でも雇用統計の悪化がガソリン価格を押し下げて2.79%まで一気に落ちた結果です。
ざっくりと言えば、関税による物価上昇は経済の悪化を打ち消すほどの力にはなれないのです。
とは言え6月には関税の影響が小幅ですが確認できていますので、次回のCPIもしっかり詳細を見て上昇圧がどの程度のものか判断していきたいと思います。
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