米国労働統計局によると、2025年7月の生産者物価指数(PPI)は、前月比+0.9%、前年比+3.3%となりました。
今回のPPIの上昇は、簡単に言えば6月の楽観を帳消しにする内容になっています。
以下前月比で見ていきます。
関税の影響
最終需要財に分類される家庭用電化製品の項目が6月の+0.8%から+5.0%に加速していたり、鉄鋼スクラップが同じく3.2%から4.5%へ上昇するなど、局所的には大きな影響が出ています。
また、これらを含む最終需要財(食品とエネルギーを除く)全体では、6月の0.2%から0.4%に上昇となっています。
その前が+0.3%を2月、3月、4月と続けていたので、ペースは変わってないですが、6月に改善した楽観は無くなった形です。
6月の失速からの回復
今回のPPIでは、関税の影響よりも最終需要サービス価格の上昇が目立ちます。
でもこれは6月の失速からの回復が影響しているようです。
米国経済は6月に失速したことは何度かお伝えしていると思いますが、ものによってはこの変動が激しく、例えば…
コンピューターハードウェア、ソフトウェア、および消耗品
6月 -4.7%
7月 +3.5%
テレビ、ビデオ、写真機器および用品の小売
6月 -10.1%
7月 +3.8%
といった具合に、大幅減からの急回復です。
しかしこれは前月比なので、こういった極端な項目はマイナスの分を取り戻せてはいないことになります。PPIの「小売」などは、マージンを追跡しているため、簡単に言えばコストが上がっているなかで6月は儲けを減らし、7月に少し取り戻したという感じです。
ただ、最終需要サービスの項目全体を見ると、6月が‐0.1%の低下で、7月に+1.1%となっていますので、同じく6月の楽観を帳消しにしていますね。
この項目は変動が激しく、この半年でもマイナスとプラスを行ったり来たりしていますので、このまま様子を見たいところです。
野菜と果物の価格上昇が示す重大な問題
以上のことから、PPIで見ると6月の楽観は無くなってしまいましたが、それでも輸入物価などが低下していたり、消費が減速しているため、最終的なCPIやPCE価格への押し上げはまだ限定的だと考えられます。
しかし、今回のPPIには、関税以上に重大なリスクが見つかりました。
それが、生野菜と乾燥野菜の価格が38.9%上昇したことです。
なぜこれが大問題かというと、おそらく原因は移民の強制送還だと思われるためです。個人的にこれは見通しを変えるぐらい懸念される新たな問題で、なぜかというと移民の強制送還が原因だった場合、影響はまだまだ出始めたばかりだからです。
その初動が40%もの価格上昇になったのは正直びっくりしました。
しかも、この問題はそう簡単に生産量を戻せないのです。
参考までにCPIで「新鮮な野菜と果物」のカテゴリーは約1.1%の比率になっています。ということは、もし強制送還により収穫ができず価格が上昇し始めているなら、まだまだ今後上昇していくことが予想されますから、仮に2倍、計100%上昇してCPIに全て乗ってきてしまうと、CPIを1.1%程度押し上げてしまうことになります。
一応、年末から年初にかけて起きた鳥インフルエンザでの卵価格の傾向から考えると、そのままCPIに全てプラスされることはなく軽減されとは思いますが、移民の強制送還による供給ショックが、新たに意識され始めるリスクは十分あります。
今後の展開
今回のPPIは、6月の楽観が無くなった事を示しています。
しかし前回のPPIに関する記事でも、僕は「実体より改善しているように見える」みたいなことを書いており、おそらくよく見ている専門家も、7月に多少強くなるのは想定内だったと思います。
ただ、関税とは別に供給ショックが始まった可能性はサプライズです。
これは想像以上でした。
農園が大変なことになっている等の情報は多少あったので油断していました。ですが、そうだとしても上昇幅が普通ではありません。
まだ強制送還の影響だと言い切れるほどの情報がないので、あくまで仮説ですが、来月以降の野菜価格に注目していきます。
  
  
  
  
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