米国 ADP雇用統計を見ていきます(2025年4月2日分)

ADP雇用統計の全国雇用レポートはサンプル数が2500万と膨大で、賃金計算業務などを担うAutomatic Data Processing, Inc.が公表しています。基本的に賃金計算を外注できる企業のデータが元になっていますから、中央値よりやや強い可能性はあります。

 

雇用者数

そのADP雇用統計、全国雇用レポートによると、米国の3月の雇用(民間)は155,000人増となりました。前回の77,000は84,000に改定されています。155,000という数字は良好ですが前回の反動増がありそうです。セクターごとでは一部少な目に減少していますが全体的に増加しています。

 

こちらが総雇用数の長期推移です。

※Automatic Data Processing, Inc., Total Nonfarm Private Payroll Employment [ADPMNUSNERSA], retrieved from FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis; https://fred.stlouisfed.org/series/ADPMNUSNERSA, April 2, 2025.

 

現在、134,399,000の非農業部門民間労働者がいると推定されており、総数が上昇傾向なのでリセッションにはまだ距離があります。

 

次は年率比の長期推移です。

※Automatic Data Processing, Inc., Total Nonfarm Private Payroll Employment [ADPMNUSNERSA], retrieved from FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis; https://fred.stlouisfed.org/series/ADPMNUSNERSA, April 2, 2025.

 

増加ペースは1.4%付近です。

 

こう見ると、2010年代に比べ今後は少なく推移しそうなので、この差が米国経済がやや弱くなっていくと考える一つの視点になります。ちなみに1年で見ると最近の年率比は増えているのですが、2023年後半にかけ急減していったため年率比だと強く出ていると考えられます。※ちなみに雇用者数でみると10月から減少傾向にあります。

 

次は賃金を見てみます。

 

賃金

賃金インサイト(こちらはサンプル1400万ほど)によると年間の賃金上昇率は職に留まった者で4.6%、転職者では6.5%となっています。

 

年間の賃金上昇率の推移です。

 

JOLTS求人数も全く同じ傾向ですが、タイトすぎて持続不可能だったレベルから持続可能な水準に落ち着いてきたのがわかります。現状の推移なら問題ないですがこれを下に抜けていかないかは注意したいです。

 

セクター別の賃金上昇率の推移も見てみます。

 

参考になるかと思って数年分の画像にしましたが、見てほしいのは右側の最新部分です。そこを見ると金融セクターの上昇率がぴょんと跳ねています。

 

これは少し気にしておきたいです。

 

米国経済のこの数年の強さは、実質賃金が強かったことがひとつの要因でした。物価よりまだまだ賃金の上昇が強いですが、特定のセクターによって押し上げられている場合、少し割り引いて考える必要があります。

 

ちなみにADP雇用統計の賃金はボーナスなども含まれているので、政府の平均時給とずれることがあります。この部分をマーケットのいわゆるイナゴ投資家は全く考慮していないので、賃金の実態をヒントに運用する時は平均時給労働者とADP賃金インサイト両方を見ておくと、マーケットより一歩先に動けることがあります。

 

まとめ

全体として、雇用者数は良好で賃金上昇も充分なため急激な実体経済の萎縮はなし、しかし反動増が考えられる点や賃金上昇が特定セクターにややけん引されている点などを考慮して、米国経済がやや弱くなっていくという見通しには影響せず、そんな内容です。

 

政府雇用統計にも注目していきましょう。

 

 

※今回の記事で特に記述のないデータや画像については、以下より取得しています。

出典: ADP Research Institute, National Employment Report, 2025年4月3日, https://www.adpemploymentreport.com.

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