毎月の米国リセッションチェックをしていきます(2025年6月末時点)

月末なのでリセッション予測リストから、兆候を確認していきます。

 

先にお伝えしておくと、今回も底堅さと弱さの両方が混在しているため、一概に米国経済は強い、あるいは弱い、と言える結果にはなりませんでした。

 

雇用指標

新規失業保険申請件数と、継続失業保険受給者数が増加傾向になっています。

どちらもまだ健全な範囲なのでリセッションとは言えませんが、これらはリセッションの数か月前から増加が始まることがあるので注意はしておきたいです。特に継続失業保険のほうが、ここにきて200万件に迫ろうとしており、これは強気を維持するには少々多いです。(弱気と言うには240万ぐらいはほしいですが…)

 

また、非農業部門雇用者数(NFP)も堅調ですが、この1年は前年比変化率で+1.1%までゆっくりと低下しています。

※パンデミック後が多すぎて参考にしにくいため2024年から切り取っています。

 

僕の考えではNFPはバースデスモデルという補正のため、その3分の1とか半分ぐらい、過大評価されていると思っています。確信はないですが色々調べてきたことを総合すると、去年の-80万以上の下方修正にはこの影響が半分程度あったと考えられます。残り半分は法的ステータスを持たない移民労働者です(つまり労働しているのに下方修正していたということです。この分析には賛否あります)

 

そしてバースデスモデルの改良版は、試験段階のためまだ採用されていません。

仮に年間40万の過大評価があった場合、1か月で4万近い過大評価なので、この場合は毎月の雇用者数はすでに10万を切りつつあると言えます。そう考えるとADP雇用統計が悪化していることとも整合性があるので、今のところ僕はこの考えで静観しています。

 

もし雇用増が毎月10万を継続的に切っていく場合は、リセッションと因果関係のある前触れなので、NFPの動向は今後非常に重要になります。

 

金融指標

リストに掲載している金融ストレス指標には問題は見られませんでした。

 

今回はリスト以外に銀行信用の伸びと、融資を厳格化する金融機関の割合を調べました。

 

まず銀行信用の伸びですが、順調に伸びているのと同時に、過去の後退水準まで肥大化している状況でもありません。

 

下のチャートは、銀行信用の前年比変化率(長期推移)です。

 

また、クレジットカードローンを厳格化する銀行の比率も、やや多いものの低下傾向です。

 

このように金融環境は実のところ緩和的ですがもし中立的に見るなら一点、企業向け融資基準を厳格化する金融機関の割合がやや増加していることをあげておきます。

 

次のチャートは中小企業向け商業・工業融資の基準を厳格化する国内銀行の純割合で、大企業向けも直近は増加傾向です。

 

総合すれば金融環境は健全に見えますが、一部に慎重な姿勢も垣間見える、そんな状況ですね。

 

複合指標

特に大きな変化はありませんが、いくつか注意点があります。

 

まずGDPギャップが低下し始めているのが相変わらず気になります。まだ十分需要はあると考えられますが、これはリセッションの前におきやすい現象なので、今後マイナス付近まで低下するかは注意したいです。

 

また、WEIにも注意が必要です。

 

アトランタ連銀GDPnowが輸入の増加を反映するため、現在参考にしにくいことは何度かお伝えしてきました。その代わりこのブログではNY連銀のWEI(Weekly Economic Index 「Lewis-Mertens-Stock」)を見ておくことを、お勧めしてきました。

 

そのWEIは+2.37%まで回復しているのですが、この上昇は構成因子のひとつであるジェット燃料の急回復に強く影響を受けている可能性があります。

 

灯油型ジェット燃料(米国メキシコ湾岸)の価格が、6月の頭から1ガロンあたり1.881ドルから、20日時点で2.3ドルまで上昇しました。この強い上昇がWEIの上昇のタイミングと合致しています。

 

そのためやや過大評価されていると思われます。

 

その他

その他、NY地下鉄利用者数、鉄道貨物量、フライト統計、Googleトレンド検索は、健全な範囲で推移していると思います。特にNY地下鉄利用者数は、まだパンデミック後のゆるやかな増加傾向が続いています。

 

また、Googleトレンド検索で、失業保険に関する検索が増えていないため、最初に記載した新規失業保険申請件数の増加ペースも余裕があると思います。

 

しいて言うなら、上記4種類のなかではフライト統計がやや息切れですがそのぐらいです。

※Flightradar24 より引用 6月29日時点 https://www.flightradar24.com/data/statistics

 

以上、今月のリセッションの傾向チェックでした。

 

やはりマイナス成長で着地するほどの悪化はまだ見られず、コンセンサスのように1.5%前後の成長は維持できると思います。しかし去年通年が2.8%だったことを考えると、多少弱い指標が増えてくるのは仕方ないですね。

 

この失速がどこまで深くなるかは、最初のほうであげたNFP次第です。

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