重要指標が多く、2日遅れてしまいましたがADP雇用統計を確認しておきます。
ADP, Inc.(Automatic Data Processing)によれば、4月の民間雇用の変化は62,000件の増加となりました。賃金インサイトによれば就業継続者は前年同月比で4.5%の賃金上昇、転職者は6.9%増でした。(プレスリリースはこちら)
雇用者数
62,000件はかなり少ない数字です。
3月の数字も155,000人から147,000人に修正されました。
数字だけ見ると普通に危険な水準ですが、ADP雇用統計は12日を含む週のデータで収集されるため、今回は市場が急落した7日直後の影響を受けています。
これはさすがに大幅減でも仕方ないかなと思います。
次のチャートはADP雇用統計の前年比の変化率です。
2019年を見てください。
パンデミックで影が薄いですが2019年はすでに経済が失速しつつありました。
当時の変化率が落ち始めていたことを考えると現状はまだ健全です。
賃金上昇率
4.5%はとても強いです。
持続不可能な賃金上昇率から鈍化はしていますが、それでも直近のPCE価格指数が2.3%であることを考えれば実質賃金は十分な強さだとわかります。
個人消費支出が昨年Q4に比べ失速していますが、この賃金であればまだしばらく底堅さがあると思います。
ADP雇用統計は政府の平均時給と違い、ボーナスや残業手当など総支給額を追跡しています。また、基本的にADP社は給与計算代行会社なので、給与計算を外注できるしっかりとした企業のデータになります。
こういった特徴は割り引いて考える必要がありますが、それでも1480万の賃金データ(雇用者数は2500万以上)に基づいますから、賃金については安心できる内容でした。
今後の注目点と今夜の政府雇用統計に向けて
今回のADP雇用者数は大幅に悪化していますが、経済が循環的に崩れているというより、あくまでセンチメントの急激な悪化が主因に見えます。
でも本質的な悪化要因も考えておきたいです。
移民による労働人口流入が止まっているなかでは、国民の純増が20万?、移民ビザの流入が60万~70万、ビザなしの庇護流入等が今のペースなら多くて約15万、合計100万程度しか人口が増えません。
もしこの中の3分の2が労働者(移民ビザは家族にも支給されます)だとすれば、60万とか70万なので、毎月の民間労働力の増加数はいずれ10万を平均的に切っていきます。
つまり米国経済は今、民間労働力の増加(就業可能な人の数=↑の数)に対し、実際に雇用された雇用者数の増加が追いつきやすい状況になっています。
追いついてしまうと、もう頭打ちになるので、この要素の成長は見込めなくなります。(生産性増加は今後も強めに続きます)
ニュースではあまり話題になりませんが、政府雇用統計ではこういう部分に注目していく必要があります。
政府雇用統計も12日を含む週のデータなので少し心配ですが今夜もチェックしていきましょう。
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