昨夜公表された米国の6月小売売上高が強く出ました。
報道では消費失速懸念が緩和と伝わっていますが、そうはならないと思うので解説します。
結果
米国センサス局による6月の小売売上は次の通りです。
前月比 +0.6%
前年比 +3.9%
数字的には確かにしっかりしている印象です。
自動車の矛盾
詳細を見ると、「自動車及び部品販売店」のカテゴリーが前月比で1.2%と、力強く伸びています。
しかし販売台数で見ると5月から減少しています。
3月4月の駆け込み需要のあとからその前の水準に戻っていません。
販売台数のほか、直近のCPIでも自動車価格は値下がりしており、これは需要が落ちていると考えられます。
つまり、自動車の小売売上は強いのに、販売台数が失速し、CPIでも価格は低迷しているという意味不明な状態になってしまいました。
でもこの矛盾は説明できます。
数字を押し上げたマジック
まず、今回の自動車の前月比+1.2%ですが、これは5月の失速-3.5%から比較しているので強く見えている状態です。
実はトータルで-2.3%のマイナスになっています。
同じ現象は小売売上全体にもあり、5月の前月比は-0.9%と低かったので、6月にジャンプして+0.6%の強い結果となったわけです。
ところが今回は前年比でも自動車は強く、なんと6.5%も増加しました。そのため一部では自動車売り上げの強さが本物だと解釈されています。
…でも、これも数字の罠です。
2024年の6月は全米の自動車ディーラーのシステムを狙ったサイバー攻撃が発生しており、販売台数が数%低下しました。つまり、前月比だけでなく前年比でも数字を押し上げる背景があったことになります。
このように、今回の小売統計は全体を押し上げる数字上のマジックがありました。
米国の消費は緩やかに減速している可能性が高い
自動車の販売台数は関税特需を除けば昨年末から失速しています。
これは自動車だけでなく、小売り全体で見ても(前年比は)同じ傾向が続いているし、他にもADP雇用統統計や購買担当者景況感指標(PMI)、個人消費など、複数の指標で同じ現象がおきています。
この現象は今までにお伝えしているように、米国の移民流入の減少と整合性があります。※移民や労働人口に関する考察は「米国移民」と言うタブを参照してください。
つまり6月の小売の強さは一時的なもので、数字の裏ではゆっくりと失速が続いていると考えられます。
懸念しすぎる必要はない
とは言え、底堅さも見られます。
例えば夏のブラックフライデーは非常に好調でした。
また、GDP算出に影響し自動車などを除いているコントロールグループも、報道によれば前月比+0.5%と伝わっており良好です。
そう言う意味で、失速傾向でもリセッションが近いことを想定するのはまだ早いです。
個人的にはポートフォリオの10割が株という強気すぎる状況はおわりましたが、今7割なのでそのままもうしばらく静観したいと思います。
コメント