米国経済のリセッションを総合的に判断していけるリストを作りました。
経済成長とは、均せば労働人口と生産性であり、波は負債(負債は全て誰かの儲け)が作ります。なので、労働市場がわかるものと、金融ストレスがわかるものに、自然と景気後退の兆候が出やすくなります。
ちなみによく言われているサームルールは掲載していません。理由は移民のカウントが雇用統計の世帯調査に正しく反映されていないためで、その場合この指標は機能しないと僕は思っています。また、労働生産性も時々チェックしていますが、現状は生産性の低下は起きそうにないので掲載しませんでした。状況が変われば追記していきます。
ぜひ活用してください。
※名称は少しアレンジしているものもあります。
労働市場
新規失業保険申請件数
fred.stlouisfed.org/series/ICSA
最重要指標で、経済指標の中では最も早く実体を反映し、1週間~2週間ほど前の状況がわかります。雇用指標は遅行指数などと言われますが、米国の場合は経済が悪くなると思えばすぐにレイオフするので、この指標に関してはむしろ先行指標となります。ただし、ハリケーンやストライキなどで一時的に上昇することがあるのでその点は注意してください。
一般的には40万以上の上昇が警戒と言われていますが、こちらの研究を参考にすると個人的には30万以上の上昇、あるいは持続的な上昇を警戒するのが良いと思います。
継続失業保険申請件数
fred.stlouisfed.org/series/CCSA
240万ぐらいに持続的に上昇しているときは要注意です。特性上、ラグが長い点に注意です。
非農業部門全従業員数
fred.stlouisfed.org/series/PAYEMS
よく経済ニュースで見る雇用統計(事業所調査)の総数です。農業や自営業は含まれません。他にも世帯調査やADP雇用統計の指標もありますが、現状はこれが最も実体に近いと思います。
毎月の増加数が10万を下回り持続的に低下する場合は警戒です。左上の数字は合計数である点に注意してください。毎月の雇用者数はこちらで確認できます。
非農業部門全労働者労働時間
fred.stlouisfed.org/series/HOANBS
労働者数とは詰まるところ労働時間の合計ということになります。横ばいのあと減少が始まったら要注意です。
労働市場状況指標(LMCI)
https://www.kansascityfed.org/data-and-trends/labor-market-conditions-indicators/
カンザスシティ連銀の強力な指標で、24の指標から労働市場の総合的な勢いをチャートにしています。景気後退を明確に判定することは難しいですが、景気後退の前から勢いが落ちているかどうかの判断に役立てることができます。
金融環境
金融ストレス指数
fred.stlouisfed.org/graph/?g=Wvb2&
ゼロ以下であれば金融環境の実態は緩和的ということです。銀行危機などが起きると、上昇し始めます。ゼロを頻繁に上回るのであれば金融環境になんらかのリスクが高まっていますが、ノイズがやや大きいので下のANFCIなどと合わせて活用してください。
シカゴ連銀NFCI ANFCI
こちらもゼロ以上の上昇は警戒です。ANFCIは優秀な指標で、パンデミックを除き景気後退の前には必ずゼロを頻繁に上回っています。古い時代はやや正確性に欠けますが、現在もしゼロを上回るときには、用心する必要があると思います。
複合指標
平滑化された景気後退確率評価
fred.stlouisfed.org/graph/?g=15Wf8
景気後退の初期から急激に上昇します。30~40を上回る場合は要注意です。
GDPギャップ
fred.stlouisfed.org/graph/?g=1qwJA
プラス圏なら需要過多、マイナス圏なら供給過多、プラス圏から急激に落ちてマイナス圏に迫るぐらいで要警戒です。比較的早い段階で変化が出ます。
GDPベースの景気後退指標指数
fred.stlouisfed.org/series/JHGDPBR
ノイズが多い点に注意ですが、40~50を超えるようなら要警戒です。
アトランタ連銀GDPNow
当期(四半期)の実質GDP予測(季節調整済み年率比)を日常的にしてくれる指標です。
リアルタイムな反面かなりブレる指標ですが、期末には近い結果になることが多いです。期末というのは例えば第1四半期なら3月分の統計が出終わる4月ごろという意味です。
GDPnowと一緒に表示されている青い線はVISAなど民間最大手トップ企業約50社のエコノミストの予測平均です。ブルーチップコンセンサスは1か月に一度の更新のようで、有料なので原本は見れないのですが、今までにこのブルーチップのラインが上昇していくときに、株価がじわじわと上昇していくことを何度か見ています。
その他
NY周辺地下鉄利用者数
metrics.mta.info/?ridership/day
パンデミックしか確認できませんので精度はわかりませんが、日々更新され実体経済の収縮を最も早く反映する可能性があります。チャートの更新は数日に一度ですが利用者数はチャートの下に掲載されています。
フライト追跡統計
https://www.flightradar24.com/data/statistics
飛行機のフライト数の統計で下のチャートが民間機です。前年と比べるなどして経済の状態を確認できます。
Googleトレンド検索
trends.google.co.jp/trends/explore
「Unemployment Insurance」などで調べると、パンデミック時に頻繁に検索されていました。ただし地下鉄利用者数のほうが早く反応していたので、気になる懸念の確認や後退の底打ち判断の方が使えるかもしれません。